【日本の会社売却はゴールではなく、経営者人生の最後の精算だった】
- 後藤 友亮

- 7月16日
- 読了時間: 4分
会社を売るにも、子どもに渡すにも、経営者の出口は簡単ではありません。
会社売却は、ゴールではなく最後の精算です。
売却価格だけを見て喜ぶのではなく、
借入金、
個人保証、
税金、
銀行との関係、
過去の税務リスク
まで整理できて、初めて本当の意味で経営者は降りられます。
今はこうした条件をすべて満たして、スムーズに会社売却までたどり着ける企業は、今の日本では決して多くないと聞きました。
特に最近よく聞耳にする売却後に税務調査が入って、買主との関係や責任の所在も含めて、より複雑な問題になっていると聞きました。
私の場合、会社を売却する1年前に税務調査が入り、過去7年厳しく調査され、多額の税金を支払うことになりました。
当時は大きな痛手でしたが、今振り返ると、売却前に税務上のリスクを整理できたという意味では、むしろ良かったのかもしれません。
そして、売却しても借金や個人保証が残れば、それは出口ではなく、経営者個人にリスクが残るだけです。
また、会社を売却せずに二代目や次の世代へ引き継ぐ場合も、決して簡単ではありません。
会社に価値があるほど、自社株の評価が高くなり、後継者に相続税や贈与税の負担が発生する可能性があります。
ところが、会社には資産や利益があっても、後継者個人に納税資金があるとは限りません。
その時に銀行が相続税の支払い資金を貸してくれなければ、後継者は会社の株式や資産を売って納税資金を作らなければならない可能性もあります。
そうなると、会社を守るために承継したはずなのに、税金を払うために会社を切り売りするような状態になりかねません。
つまり、会社の出口は「売却」だけではありません。
親族に承継する場合でも、相続税、自社株評価、納税資金、銀行融資、個人保証の問題を避けて通ることはできません。
だから、会社売却で本当に大切なのは、いくらで売れたかではなく、最後に安全に降りられるかどうかです。
そして、次の世代に渡す場合のリスクもあります、後継者が無理なく引き継げる形にしておかなければ、本当の意味での承継とは言えないと思います。
経営者は、会社がまだ元気で選択肢があるうちに、売却するのか、承継するのか、清算するのかを考えておくべきです。
私自身の感覚では、その一つの目安は55歳前後だと思っています。
今の日本では、経営者が背負うリスクがあまりにも大きくなっています。
ある意味で、強い欲や勢いがある時期でなければ、とても続けられない仕事だと感じます。
だからこそ、経営者は元気なうちに、そして会社にまだ価値があるうちに、自分と家族、そして次の世代のために、出口を考えておく必要があると実体験として強く感じています。
最近では、子どもに会社をM&Aの形で売却する方法も聞くようになりました。
これは、相続や贈与で株を渡すのではなく、子どもや子どもが作った会社が買主となり、親の持っている会社株式を買い取る形です。
うまく設計できれば、親は会社株式を現金化でき、子どもは事業を引き継ぐことができます。
しかし、これも簡単ではありません。
子どもが株式を買い取るためには資金が必要であり、多くの場合は銀行融資が前提になります。
銀行が貸してくれなければ、この形の承継は成立しません。
また、親族間だからといって安く売れば、税務上は贈与とみなされる可能性もあります。
つまり、子どもにM&Aで売却する方法も、結局は株価評価、税金、銀行融資、返済原資、個人保証の問題を避けて通ることはできません。
売却であっても、相続であっても、親族内承継であっても、会社の出口は想像以上に複雑です。
最後に、実際に思い切って経営から降りてみると、お金には代えられない良さがあることに気づきました。
現役の頃は、会社のこと、社員のこと、借入のこと、税金のこと、日々の仕事のこと、そして自分の目が届かないところで労災事故が起きないかという不安が、常に頭から離れませんでした。
しかし、経営から離れてみて、初めて「自分の時間」が戻ってきた感覚があります。
昔、社員が「自分の時間が大切にしたい」と言っていたことがありました。
当時の私は、経営者としてその言葉の意味を本当には理解できていなかったと思います。
でも今なら、その意味がよく分かります。
経営者の人生の後半では、お金よりも、自分の時間を取り戻すことの価値の方が大きいのかもしれません。





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