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日本の拡大する複雑すぎる制度は、真面目な経営者ほど苦しめる──「制度を減らす成長戦略」を考えるべきではないか


私は昔から、日本の税金や制度の仕組みに強い違和感を持ってきました。

最近では、一昔前なら親が子供に普通に渡していた生活費や資金援助、逆に子供から親への仕送りまで、「これは贈与になるのか」「贈与税がかかるのか」といった内容が、ネットでも頻繁に取り上げられるようになりました。


もちろん、通常必要な生活費や教育費まで、何でも贈与税の対象になるわけではありません。


それでも親にとって子供は、自分が育て、自分の人生をつないでいく存在です。感覚的には、自分の分身のように感じる親も多いでしょう。

そこに細かな贈与税のルールがあり、亡くなった後には相続税があります。

私は昔から、

「家族の中で財産を引き継ぐことまで、ここまで複雑な税金の仕組みにする必要があるのだろうか」

と疑問に感じてきました。

もちろん相続税には、資産格差の固定を防ぎ、富を再分配するという考え方があります。ですから、相続税そのものをすべて否定するつもりはありません。

しかし、税率や制度設計によっては、創業者や経営者の相続時に、会社の株式や事業用資産を維持するための大きな負担が生じます。

会社は利益を出していても、相続税を支払うための現金を十分に持っているとは限りません。

そのため私は、中小企業の事業承継まで難しくしてしまう税制でよいのかという疑問も持っています。

そして、私がさらに大きな問題だと思っているのが、日本の制度そのものが複雑になりすぎていることです。


税金を払うことより、「間違えないこと」の方が難しい

会社を経営すると、

これは経費になる。

これはならない。

これは一部だけ認められる。

これは資産計上。

これは減価償却。

これは私的利用と判断される可能性がある。

といった判断が次々に出てきます。

さらに、その判断を後から説明できるように、領収書、請求書、契約書、振込記録、使用目的などを保存しておかなければなりません。

新しい分野になるほど、さらに難しくなります。

仮想通貨が広がり始めた頃などは、長年仕事をしている税理士ですら、処理について判断に迷うことがありました。

そこで私は思います。

専門家ですら判断が難しい制度を、普通の経営者に「絶対に間違えずに申告してください」と求めること自体に、無理があるのではないか。


私は税理士にずっと「疑われそうなら経費にしなくていい」と言ってきた

私は約35年間、会社を経営してきました。

もともと細かなことや面倒なことが嫌いなので、税理士には、

「本来経費として認められるものでも、税務署から疑われそうなら経費にしなくていい」

と言ってきました。

もちろん経営者ですから、法律の範囲内で税負担を抑えたいという気持ちはあります。

しかし私は、それ以上に、後から税務署と揉めることや、面倒な問題が起きることを避けたいと考えていました。

そのため、本来なら経費にできるものでも、疑われる可能性があるなら経費にしない。

多少税金を多く払うことになっても、それで安心できるなら、その方がいい。

そういう考え方で経営してきました。

それでも、経営を始めてから33年目頃に入った税務調査では、大きな問題になりました。

それ以前も基本的には同じ考え方で、税理士と相談しながら申告してきました。

しかし、それまでは大きな問題にはなりませんでした。

ところが、その一度の税務調査では、税理士から問題ないと言われていた処理まで次々と否認され、最終的には脱税と判断される結果になりました。

経営者側からすると、

「今まで同じようにやっていて問題にならなかったものが、ある時突然ダメになる」

という感覚です。

もちろん税務署にも法律上の判断根拠があり、好き勝手に決めていると言いたいわけではありません。

しかし、税理士に確認して処理していても、それが絶対の保証にはならない。

ここに経営者としての怖さがあります。


一度の税務調査で、普通の中小企業なら倒産しかねない

税務調査では、お金の流れ、経費の目的、取引の内容などを非常に細かく確認されます。

必要な調査であることは理解しています。

それでも受ける側からすると、まるで最初から犯罪者として疑われ、取り調べを受けているように感じることがありました。

そして、私にとって本当に怖かったのは最終的な金額です。

普通の中小企業なら、その一度の追徴で倒産してもおかしくないほどの金額になりました。

会社に資金があったから耐えられただけで、資金繰りに余裕がなければ、その一回で会社が終わっていた可能性があります。

そのため私は、税理士に対して損害賠償を求めることになり、最終的に賠償金が支払われました。

ところが、そこでまた驚くことがありました。

会社が受け取った損害賠償金についても税務上の処理が必要となり、結果として会社の利益や税負担に影響しました。

感覚的には、

「税務上の問題によって失ったお金の一部が賠償として戻ってきても、そこからまた税負担が発生するのか」

という思いでした。

さらに、損害賠償請求には弁護士費用もかかりました。

税務調査の途中では、当初の顧問税理士だけでは問題がさらに広がると感じたため、別に弁護士資格を持つ税理士などにも依頼し、追加の費用もかかりました。

つまり、負担は追徴税額だけではありません。

税務調査に対応するための専門家費用、時間、そして精神的な負担まで含めれば、実際のコストはさらに大きくなります。

この経験を通じて私は、

税金が高いこと以上に怖いのは、「正しくやっているつもりでも、後から違うと言われること」だ

と強く感じました。


悪質な脱税と、判断の違いは分けて考えるべきではないか

私は、意図的な売上隠しや架空経費、帳簿の改ざんまで許せと言っているわけではありません。

悪質な脱税は当然、厳しく取り締まるべきです。

しかし一方で、

税理士に確認しながら処理していた。

本人にも隠す意図がなかった。

それでも後から判断が変わり、会社が倒産しかねないほどの追徴になる。

こうしたケースと、最初から意図的に税金を逃れようとする行為は、できる限り明確に分けて考えられる制度にする必要があるのではないでしょうか。


だから私は昔から「売上税や消費税の方がまだマシ」と考えてきた

私は何十年も前から、

企業の税金は、もっと単純な売上税のような仕組みにした方がよいのではないか

と考えてきました。

実際に、今回の税務調査が入るずっと前から、税務署の人にもこの話をしたことがあります。

もちろん売上税にも欠点があります。

しかし私が言いたいのは、

「売上税が完璧だ」ということではありません。

現在の複雑すぎる仕組みと比較すれば、

売上税や消費税のように、取引や売上を基準として、より機械的に計算できる仕組みの方がまだマシなのではないか

ということです。

100点の公平性を目指して、専門家でなければ理解できない制度を作るより、

80点程度の公平性でも、誰でも理解でき、誰が計算してもほぼ同じ答えになり、不正もしにくい制度の方が、社会全体としては効率的ではないか。

私はそう考えています。


税金には「目に見えない巨大なコスト」がある

現在の税制では、税金そのもの以外にも膨大な費用がかかっています。

企業は経理担当者を置く。

税理士に報酬を払う。

会計ソフトを使う。

領収書や証拠を保存する。

法改正を確認する。

税務調査に対応する。

一方で政府側も、税務職員を配置し、申告を確認し、調査し、税額を再計算します。

つまり社会全体では、

税金を集めるために、さらに巨大な時間と費用を使っている。

私は、この「見えない徴税コスト」をもっと数字として見えるようにするべきだと思います。

もし今、企業側で人間がやっている申告作業をすべて政府側でやってみれば、その制度を維持するためにどれほど多くの人とお金が必要なのか、はっきり見えるはずです。

そうすれば、

「この制度を維持するために、社会全体でこれほどのコストを使う意味が本当にあるのか」

という議論もできるようになります。


政府がすでに分かっていることは、政府が計算すればいい

AIやデジタル技術がここまで進んだのなら、政府がすでに把握している情報を、国民や企業に何度も申告させる必要はないと思います。

法律上利用できる範囲で、給与、社会保険、取引情報などをもとに政府側で計算し、

「あなたの税額や社会保険料はこれです。違うところがあれば訂正してください」

という仕組みに近づければいい。

今の制度は、

国民や企業が正解を作り、後から政府が採点する

ような形になっています。

しかし、専門家ですら判断が難しい制度なら、

政府が把握できる部分については、最初から政府側で答えを作る。

その方が合理的ではないでしょうか。

間違いも減ります。

申告作業も減ります。

税務調査だけでなく、社会保険や労務に関する確認・調査の負担も減らせるでしょう。

そして何より、意図的な不正ではない単純な判断違いから、大きな追徴や「脱税」と判断されるケースも減らせるはずです。


本当の問題は税務だけではない

この問題は税金だけではありません。

日本には、税務、労務、社会保険、補助金、許認可、建築、不動産、会社設立、相続、外国人雇用など、複雑な制度が数多くあります。

小さな会社の経営者は、本来の仕事に加えて、

営業をする。

現場を見る。

社員を管理する。

資金繰りをする。

そしてさらに、

税務を勉強する。

労務を勉強する。

社会保険を理解する。

法改正を追いかける。

各種申請や届出をする。

これでは、本来会社を成長させるために使うべき時間と頭脳が、制度への対応で消えてしまいます。


制度が複雑になるほど、「制度攻略能力」が重要になる

私は、ここが最も大きな問題だと思っています。

制度が複雑になるほど、

「どこまでなら大丈夫か」

「ここは見つからないだろう」

「この処理なら通る」

「この専門家ならうまく処理してくれる」

といった能力が重要になります。

つまり、

制度の境界線を読み、制度を攻略する能力が、経営上の利益を左右するようになる。

これは、本来競争させるべき経営能力ではありません。

経営者が競うべきなのは、

良い商品を作れるか。

良いサービスを提供できるか。

社員を育てられるか。

新しい市場を作れるか。

会社を成長させられるか。

という部分のはずです。

ところが制度が複雑すぎると、

「税務や労務をどれだけ上手に切り抜けられるか」

まで経営力の一部になってしまいます。

そして、真正面からすべて守ろうとする会社ほど、時間も費用も精神力も使います。

一方で、ギリギリまで攻め、制度の隙間を使い、結果的に調査されなかった会社の方がお金を残せる場合もあります。

そうなると制度そのものが、

「正直にやりなさい」ではなく、「うまくやりなさい」

という間違ったメッセージを送ることになります。

本来は、

正直にやることが一番簡単で、一番安心できる制度

でなければならないはずです。


日本の成長戦略に「制度を減らす」を入れてほしい

これからAIがさらに発達すれば、多くの行政事務や申告作業は自動化できるでしょう。

そこで私は、非常に単純に考えています。

AIで解決できる面倒はAIに任せる。

政府がすでに把握していることは、政府側で処理する。

それでも大量の人間が動かなければならない制度は、制度そのものを簡単にする。

これを、日本の数ある成長戦略の一つに入れてほしいと思います。

AI産業を育てる。

半導体に投資する。

スタートアップを支援する。

それらも大切です。

しかし同じくらい、

制度を減らす。

申請を減らす。

書類を減らす。

専門家がいなくても理解できる制度にする。

という改革が重要だと思います。


「デジタル化」と「簡素化」は違う

100枚の紙の書類を、100項目のオンライン入力に変えても、本質的には同じです。

それはデジタル化しただけです。

本当の改革は、

100枚を1枚にすること。

さらに言えば、

その1枚すら不要にすること。

政府がすでに持っている情報を、国民にもう一度書かせない。

AIで処理できるものは自動化する。

それでも複雑なら、制度そのものを見直す。

私は、こういう改革こそ日本に必要だと思います。

最後に

私は約35年間会社を経営してきました。

その経験から強く感じるのは、

複雑すぎる制度は、不正を防ぐだけでなく、「制度をうまく攻略できる人」を有利にしてしまう

ということです。

経営者が競うべきなのは、税務や労務の制度を攻略する能力ではありません。

良い商品やサービスを作り、本業で会社を成長させる能力です。

だから私は、

AIで処理できる複雑さはAIに任せる。政府が分かることは政府が処理する。それでも人間が制度攻略をしなければならない部分は、制度そのものを簡単にする。

この方向へ進んでほしいと思います。

税金も、労務も、行政も、

「人を間違えさせない制度」に変える。

そして、


「制度を攻略できる人が得をする国」から、「本業で頑張った人が報われる国」へ変える。

それも、AI時代の日本に必要な成長戦略ではないでしょうか。

今の私は、以前ほど税務署と関わる立場ではありません。


だからこそ、これは自分自身のためというより、これから日本で会社を作り、事業に挑戦する人たちのために思うことです。

日本の制度をもっと単純で、分かりやすく、正直にやる人が安心できるものに変えてほしい。


35年間経営してきた経験から、強くそう思っています。

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