検索結果
このサイトを検索
空の検索で905件の結果が見つかりました。
- 制度の簡素化を日本の成長戦略に――真面目な経営者を苦しめる複雑すぎる制度
制度の簡素化を、日本の成長戦略に 私は昔から、日本の税金や制度の仕組みに強い違和感を持ってきました。 日本の成長戦略には、制度の簡素化も必要ではないでしょうか。約35年間会社を経営してきた経験から、税務・労務・社会保険などの複雑な仕組みが、経営者に与える負担について考えます。 最近では、一昔前なら親が子供に普通に渡していた生活費や資金援助、逆に子供から親への仕送りまで、「これは贈与になるのか」「贈与税がかかるのか」といった内容が、ネットでも頻繁に取り上げられるようになりました。 もちろん、通常必要な生活費や教育費まで、何でも贈与税の対象になるわけではありません。 それでも親にとって子供は、自分が育て、自分の人生をつないでいく存在です。 感覚的には、自分の分身のように感じる親も多いでしょう。 そこに細かな贈与税のルールがあり、亡くなった後には相続税があります。 私は昔から、 「家族の中で財産を引き継ぐことまで、ここまで複雑な税金の仕組みにする必要があるのだろうか」 と疑問に感じてきました。 もちろん相続税には、資産格差の固定を防ぎ、富を再分配するという考え方があります。 ですから、相続税そのものをすべて否定するつもりはありません。 しかし、税率や制度設計によっては、創業者や経営者の相続時に、会社の株式や事業用資産を維持するための大きな負担が生じます。 会社は利益を出していても、相続税を支払うための現金を十分に持っているとは限りません。 そのため私は、中小企業の事業承継まで難しくしてしまう税制でよいのかという疑問も持っています。 そして、私がさらに大きな問題だと思っているのが、日本の制度そのものが複雑になりすぎていることです。 税金を払うことより、「間違えないこと」の方が難しい 会社を経営すると、 これは経費になる。 これはならない。 これは一部だけ認められる。 これは資産計上。 これは減価償却。 これは私的利用と判断される可能性がある。 といった判断が次々に出てきます。 さらに、その判断を後から説明できるように、領収書、請求書、契約書、振込記録、使用目的などを保存しておかなければなりません。 新しい分野になるほど、さらに難しくなります。 仮想通貨が広がり始めた頃などは、長年仕事をしている税理士ですら、処理について判断に迷うことがありました。 そこで私は思います。 専門家ですら判断が難しい制度を、普通の経営者に「絶対に間違えずに申告してください」と求めること自体に、無理があるのではないか。 私は税理士にずっと「疑われそうなら経費にしなくていい」と言ってきた 私は約35年間、会社を経営してきました。 もともと細かなことや面倒なことが嫌いなので、税理士には、 「本来経費として認められるものでも、税務署から疑われそうなら経費にしなくていい」 と言ってきました。 もちろん経営者ですから、法律の範囲内で税負担を抑えたいという気持ちはあります。 しかし私は、それ以上に、後から税務署と揉めることや、面倒な問題が起きることを避けたいと考えていました。 そのため、本来なら経費にできるものでも、疑われる可能性があるなら経費にしない。 多少税金を多く払うことになっても、それで安心できるなら、その方がいい。 そういう考え方で経営してきました。 それでも、経営を始めてから33年目頃に入った税務調査では、大きな問題になりました。 それ以前も基本的には同じ考え方で、税理士と相談しながら申告してきました。 しかし、それまでは大きな問題にはなりませんでした。 ところが、その一度の税務調査では、税理士から問題ないと言われていた処理まで次々と否認され、最終的には脱税と判断される結果になりました。 経営者側からすると、 「今まで同じようにやっていて問題にならなかったものが、ある時突然ダメになる」 という感覚です。 もちろん税務署にも法律上の判断根拠があり、好き勝手に決めていると言いたいわけではありません。 しかし、税理士に確認して処理していても、それが絶対の保証にはならない。 ここに経営者としての怖さがあります。 一度の税務調査で、普通の中小企業なら倒産しかねない 税務調査では、お金の流れ、経費の目的、取引の内容などを非常に細かく確認されます。 必要な調査であることは理解しています。 それでも受ける側からすると、まるで最初から犯罪者として疑われ、取り調べを受けているように感じることがありました。 そして、私にとって本当に怖かったのは最終的な金額です。 普通の中小企業なら、その一度の追徴で倒産してもおかしくないほどの金額になりました。 会社に資金があったから耐えられただけで、資金繰りに余裕がなければ、その一回で会社が終わっていた可能性があります。 そのため私は、税理士に対して損害賠償を求めることになり、最終的に賠償金が支払われました。 ところが、そこでまた驚くことがありました。 会社が受け取った損害賠償金についても税務上の処理が必要となり、結果として会社の利益や税負担に影響しました。 感覚的には、 「税務上の問題によって失ったお金の一部が賠償として戻ってきても、そこからまた税負担が発生するのか」 という思いでした。 さらに、損害賠償請求には弁護士費用もかかりました。 税務調査の途中では、当初の顧問税理士だけでは問題がさらに広がると感じたため、別に弁護士資格を持つ税理士などにも依頼し、追加の費用もかかりました。 つまり、負担は追徴税額だけではありません。 税務調査に対応するための専門家費用、時間、そして精神的な負担まで含めれば、実際のコストはさらに大きくなります。 この経験を通じて私は、 税金が高いこと以上に怖いのは、「正しくやっているつもりでも、後から違うと言われること」だ と強く感じました。 悪質な脱税と、判断の違いは分けて考えるべきではないか 私は、意図的な売上隠しや架空経費、帳簿の改ざんまで許せと言っているわけではありません。 悪質な脱税は当然、厳しく取り締まるべきです。 しかし一方で、 税理士に確認しながら処理していた。 本人にも隠す意図がなかった。 それでも後から判断が変わり、会社が倒産しかねないほどの追徴になる。 こうしたケースと、最初から意図的に税金を逃れようとする行為は、できる限り明確に分けて考えられる制度にする必要があるのではないでしょうか。 だから私は昔から「売上税や消費税の方がまだマシ」と考えてきた 私は何十年も前から、 企業の税金は、もっと単純な売上税のような仕組みにした方がよいのではないか と考えてきました。 実際に、今回の税務調査が入るずっと前から、税務署の人にもこの話をしたことがあります。 もちろん売上税にも欠点があります。 しかし私が言いたいのは、 「売上税が完璧だ」ということではありません。 現在の複雑すぎる仕組みと比較すれば、 売上税や消費税のように、取引や売上を基準として、より機械的に計算できる仕組みの方がまだマシなのではないか ということです。 100点の公平性を目指して、専門家でなければ理解できない制度を作るより、 80点程度の公平性でも、誰でも理解でき、誰が計算してもほぼ同じ答えになり、不正もしにくい制度の方が、社会全体としては効率的ではないか。 私はそう考えています。 税金には「目に見えない巨大なコスト」がある 現在の税制では、税金そのもの以外にも膨大な費用がかかっています。 企業は経理担当者を置く。 税理士に報酬を払う。 会計ソフトを使う。 領収書や証拠を保存する。 法改正を確認する。 税務調査に対応する。 一方で政府側も、税務職員を配置し、申告を確認し、調査し、税額を再計算します。 つまり社会全体では、 税金を集めるために、さらに巨大な時間と費用を使っている。 私は、この「見えない徴税コスト」をもっと数字として見えるようにするべきだと思います。 もし今、企業側で人間がやっている申告作業をすべて政府側でやってみれば、その制度を維持するためにどれほど多くの人とお金が必要なのか、はっきり見えるはずです。 そうすれば、 「この制度を維持するために、社会全体でこれほどのコストを使う意味が本当にあるのか」 という議論もできるようになります。 政府がすでに分かっていることは、政府が計算すればいい AIやデジタル技術がここまで進んだのなら、政府がすでに把握している情報を、国民や企業に何度も申告させる必要はないと思います。 法律上利用できる範囲で、給与、社会保険、取引情報などをもとに政府側で計算し、 「あなたの税額や社会保険料はこれです。違うところがあれば訂正してください」 という仕組みに近づければいい。 今の制度は、 国民や企業が正解を作り、後から政府が採点する ような形になっています。 しかし、専門家ですら判断が難しい制度なら、 政府が把握できる部分については、最初から政府側で答えを作る。 その方が合理的ではないでしょうか。 間違いも減ります。 申告作業も減ります。 税務調査だけでなく、社会保険や労務に関する確認・調査の負担も減らせるでしょう。 そして何より、意図的な不正ではない単純な判断違いから、大きな追徴や「脱税」と判断されるケースも減らせるはずです。 本当の問題は税務だけではない この問題は税金だけではありません。 日本には、税務、労務、社会保険、補助金、許認可、建築、不動産、会社設立、相続、外国人雇用など、複雑な制度が数多くあります。 小さな会社の経営者は、本来の仕事に加えて、 営業をする。 現場を見る。 社員を管理する。 資金繰りをする。 そしてさらに、 税務を勉強する。 労務を勉強する。 社会保険を理解する。 法改正を追いかける。 各種申請や届出をする。 これでは、本来会社を成長させるために使うべき時間と頭脳が、制度への対応で消えてしまいます。 制度が複雑になるほど、「制度攻略能力」が重要になる 私は、ここが最も大きな問題だと思っています。 制度が複雑になるほど、 「どこまでなら大丈夫か」 「ここは見つからないだろう」 「この処理なら通る」 「この専門家ならうまく処理してくれる」 といった能力が重要になります。 つまり、 制度の境界線を読み、制度を攻略する能力が、経営上の利益を左右するようになる。 これは、本来競争させるべき経営能力ではありません。 経営者が競うべきなのは、 良い商品を作れるか。 良いサービスを提供できるか。 社員を育てられるか。 新しい市場を作れるか。 会社を成長させられるか。 という部分のはずです。 ところが制度が複雑すぎると、 「税務や労務をどれだけ上手に切り抜けられるか」 まで経営力の一部になってしまいます。 そして、真正面からすべて守ろうとする会社ほど、時間も費用も精神力も使います。 一方で、ギリギリまで攻め、制度の隙間を使い、結果的に調査されなかった会社の方がお金を残せる場合もあります。 そうなると制度そのものが、 「正直にやりなさい」ではなく、「うまくやりなさい」 という間違ったメッセージを送ることになります。 本来は、 正直にやることが一番簡単で、一番安心できる制度 でなければならないはずです。 日本の成長戦略に「制度を減らす」を入れてほしい これからAIがさらに発達すれば、多くの行政事務や申告作業は自動化できるでしょう。 そこで私は、非常に単純に考えています。 AIで解決できる面倒はAIに任せる。 政府がすでに把握していることは、政府側で処理する。 それでも大量の人間が動かなければならない制度は、制度そのものを簡単にする。 これを、日本の数ある成長戦略の一つに入れてほしいと思います。 AI産業を育てる。 半導体に投資する。 スタートアップを支援する。 それらも大切です。 しかし同じくらい、 制度を減らす。 申請を減らす。 書類を減らす。 専門家がいなくても理解できる制度にする。 という改革が重要だと思います。 「デジタル化」と「簡素化」は違う 100枚の紙の書類を、100項目のオンライン入力に変えても、本質的には同じです。 それはデジタル化しただけです。 本当の改革は、 100枚を1枚にすること。 さらに言えば、 その1枚すら不要にすること。 政府がすでに持っている情報を、国民にもう一度書かせない。 AIで処理できるものは自動化する。 それでも複雑なら、制度そのものを見直す。 私は、こういう改革こそ日本に必要だと思います。 最後に 私は約35年間会社を経営してきました。 その経験から強く感じるのは、 複雑すぎる制度は、不正を防ぐだけでなく、「制度をうまく攻略できる人」を有利にしてしまう ということです。 経営者が競うべきなのは、税務や労務の制度を攻略する能力ではありません。 良い商品やサービスを作り、本業で会社を成長させる能力です。 だから私は、 AIで処理できる複雑さはAIに任せる。政府が分かることは政府が処理する。 それでも人間が制度攻略をしなければならない部分は、制度そのものを簡単にする。 この方向へ進んでほしいと思います。 税金も、労務も、行政も、 「人を間違えさせない制度」に変える。 そして、 「制度を攻略できる人が得をする国」から、「本業で頑張った人が報われる国」へ変える。 それも、AI時代の日本に必要な成長戦略ではないでしょうか。 今の私は、以前ほど税務署と関わる立場ではありません。 だからこそ、これは自分自身のためというより、これから日本で会社を作り、事業に挑戦する人たちのために思うことです。 日本の制度をもっと単純で、分かりやすく、正直にやる人が安心できるものに変えてほしい。 35年間経営してきた経験から、強くそう思っています。 協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE 静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/
- どんな記事が読まれている?――過去30日の人気記事・急上昇記事 TOP5
いつも「かけはし」のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。 今回は、過去30日間で多く読まれた記事と、前の期間に比べて閲覧数が大きく伸びた記事を、それぞれ5本ずつご紹介します。 引退後の働き方、19歳からの経営者人生、家族の記録、モンゴルでの生活、室外機の盗難対策、そしてAIやメタバースまで。 気になる記事がありましたら、この機会にご覧いただければうれしいです。 ※ランキングと増加率は、2026年10月21日に確認したアクセス解析に基づきます。 過去30日間で多く読まれた記事 TOP5 第1位|私の引退後の働き方――「働かない自由」ではなく、自分で決められる自由 私にとって引退とは、仕事をすべて辞めることではなく、仕事に追われる生活から離れることでした。 今日、何をするのか。誰と関わり、何のために時間を使うのか。それを自分で決められることが、今の私にとっての自由です。 なお、この記事はサイトのトップに固定表示しています。ほかの記事より目に触れる機会が多いことも、閲覧数に影響している可能性があります。 ▶「私の引退後の働き方」を読む ※第1位の記事は、サイトのトップに固定表示しています。そのため、ほかの記事より目に触れる機会が多いことが、閲覧数に影響している可能性があります。 第2位|今だから書ける、コロナワクチン接種について考える コロナ禍に会社を経営していた当時の経験を振り返り、自分が見聞きしたことや、そこから生まれた疑問を書きました。 個人の経験だけで、ワクチンや感染対策の効果を判断できるわけではありません。 当時の体験と医学的な因果関係を分けながら、一人の経営者の記録としてまとめています。 ▶「今だから書ける、コロナワクチン接種について考える」を読む 第3位|第1話|19歳で経営者になった――下積みがなかったからこそ、何でもできた 19歳で自営を始めた、私の原点について書いた記事です。 下積み経験がほとんどないまま始めたからこその難しさもありました。 一方で、決まった業種ややり方に縛られず、さまざまな仕事に挑戦できた面もあったと思います。 現在につながる、経営者人生の始まりを振り返っています。 ▶「19歳で経営者になった」を読む 第4位|AIがメタバースの入口を1000倍広げる?――Second Lifeに自分のOfficeを作って気づいたこと 仮想空間「Second Life」に土地を購入し、自分のOfficeを作ってみました。 実際に取り組むと、土地探しから建物の設置まで、初心者には難しい操作がいくつもありました。それでも、AIに相談しながら少しずつ形にすることができました。 AIは、これまで難しくて参加できなかった世界への入口を広げるのではないか。そんな可能性を感じた体験です。 ※タイトルの「1000倍」は統計ではなく、体験から感じた可能性を表したものです。 ▶「AIがメタバースの入口を1000倍広げる?」を読む 第5位|余命3か月と告げられた父が家族のもとへ――それから4年半を生きた、今も答えの分からない体験 余命3か月と告げられた父が、自宅へ戻り、その後4年半を生きた家族の記録です。 なぜ、そのような経過をたどったのか。今も私には答えが分かりません。 特定の治療による効果とは断定せず、家族として経験したことと、父と過ごした時間を残しました。 ▶「余命3か月と告げられた父が家族のもとへ」を読む 閲覧数が急上昇した記事 TOP5 続いて、前の期間と比べて閲覧数が大きく伸びた5本を、増加率の高い順にご紹介します。 増加率は、前の期間の閲覧数が少ない場合にも大きくなります。「多く読まれた記事」とは異なり、最近の伸びを見るランキングです。 第1位|モンゴルのガソリン不足、1週間前から給油まで3〜4時間待ち 前期間比633%増/22閲覧 ウランバートルで、ガソリンスタンドに長い給油待ちの列ができていた当時の様子を記録しました。 暮らしの中で当たり前に使っている燃料が、いつでも手に入るとは限らない。 現地の行列を見て、エネルギーを海外に頼る国のリスクを身近に感じた記事です。 ※公開当時の状況を記録したもので、現在の給油状況を示すものではありません。 ▶「モンゴルのガソリン不足」を読む 第2位|エアコン室外機の鉄製盗難防止カバーを設置 前期間比300%増/44閲覧 特注した鉄製の盗難防止カバーを、阿多古の古民家に設置した記録です。 サイズや外観の収まりだけでなく、コンクリートが硬く、アンカーボルト用の穴開けに苦労したことなど、実際に作業して分かった点も紹介しています。 完全に盗難を防げると保証するものではありませんが、簡単に持ち出されないための対策として取り組みました。 ▶「エアコン室外機の鉄製盗難防止カバーを設置」を読む 第3位|若者を奪い合う日本――移民で埋めるか、国を小さく作り直すか、選択の時期 前期間比213%増/25閲覧 企業同士、地域同士で若い人を呼び込もうとしても、日本全体の若者の数が増えるわけではありません。 人手不足をどう補うのか。人口が減っても暮らしを維持できるよう、街や公共サービスの形をどう変えるのか。 これからの日本について、私なりの考えをまとめた記事です。 ▶「若者を奪い合う日本」を読む 第4位|エアコン室外機の盗難対策――鉄製防犯カバーを特注しました 前期間比158%増/31閲覧 こちらは、設置前の「製作を依頼した段階」の記事です。 室外機の盗難対策として、アンカーボルトで固定できる鉄製カバーを鍛冶屋さんに特注しました。どのような対策を考え、鉄製を選んだのかを紹介しています。 設置の記事とあわせて読むと、依頼から施工までの流れをご覧いただけます。 ▶「鉄製防犯カバーを特注しました」を読む 第5位|外国人を増やしても日本の不動産は救えない――空き家900万戸、超人口減少時代の結論 前期間比133%増 外国人が増えれば、住宅需要はどこまで支えられるのでしょうか。 人口動態と、外国人雇用に関わってきた経験をもとに、地域による需要の違いや、これからの不動産について考えました。 全国の不動産を一括りにせず、「その場所を必要とする人がいるのか」という視点で見ています。将来についての私自身の試算や見解も含む記事です。 ▶「外国人を増やしても日本の不動産は救えない」を読む 幅広く書いてきたからこそ、見えてきたこと 今回の記事を並べると、テーマは実にさまざまです。 自分の人生について考えたこともあれば、室外機を盗まれないように工夫したこともあります。モンゴルで見た暮らしの現実や、AIと一緒に新しい世界へ挑戦した記録もあります。 もちろん、閲覧数だけで記事の価値が決まるわけではありません。表示する場所や公開からの日数、SNSでの紹介などにも左右されます。 それでも、自分が経験し、調べ、考えたことが、誰かに読まれている。そのことは、書き続ける楽しみの一つになっています。 これからも、良い面だけでなく、困ったことや失敗したこと、まだ答えの出ていないことも含めて残していきたいと思います。 いつも読んでくださる皆さま、ありがとうございます。 ▶ かけはしの記事一覧を見る 協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE 静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/
- 第1回|浜松で土地が売れない――住宅価格の高騰と住宅市場の現実
不動産屋との何気ない会話から 「浜松で土地が売れない」。2026年10月、地元の不動産屋さんとの何気ない会話から、住宅市場の厳しい現実が見えてきました。 最初に出てきたのは、驚くほど厳しい話でした。 「住宅価格が高くなりすぎて、土地が売れないんです」 もちろん、すべての土地が売れないという意味ではありません。しかし、一般的な住宅購入者が手を出しにくい状況になっているそうです。 私自身、長年事業や不動産に関わってきましたが、今回の話からは、以前とは明らかに違う住宅市場の姿が見えてきました。 土地と家を合わせると5,000万~7,000万円 現在、土地を購入して注文住宅を建てようとすると、総額で5,000万~7,000万円になるケースもあるそうです。 土地代だけでなく、建物本体、外構、各種工事、諸費用などが積み重なるためです。 なかには50年ローンを組む人もいるとのことでした。 ただ、50年という年月を考えると、購入をためらう人がいるのも理解できます。 住宅購入時には返済できると思っていても、将来の収入、金利、健康状態、転職、家族構成などは変わります。 借入期間が長くなれば月々の返済負担は抑えられても、返済が続く期間も長くなります。 浜松で土地が売れない理由――不動産屋が語る「1,000万円の壁」 不動産屋さんによると、土地は1,000万円を超えると購入希望者が減りやすいそうです。 特に難しいのが、面積の広い土地です。 以前なら、広い庭や大きな住宅を建てられることが魅力でした。 しかし現在は、土地が広いほど購入総額が大きくなり、庭の管理や外構工事にも費用がかかります。 結果として、土地そのものに魅力があっても、住宅まで含めた予算が合わない。 これは土地の価値が単純に下がったというより、買える人が少なくなっているという問題なのかもしれません。 注文住宅を諦め、3,500万円前後の建売へ 注文住宅を希望していた人が、総額3,500万円ほどの建売住宅に切り替えるケースもあるそうです。 建売住宅なら、土地と建物を合わせた価格が最初から分かりやすく、予算も組みやすい。 ところが、ここでも意外な話が出ました。 「建売でも、場所が良くないと売れないんです」 単に価格を安くすれば売れるわけではないそうです。 買い物、通勤、学校、病院、災害リスクなど、立地条件による選別が進んでいるようです。 それでも駅周辺は高くても売れる 今日の話で最も印象に残ったことの一つです。 郊外の土地は売れにくいのに、駅周辺の便利な土地は高くても売れているそうです。 しかも、多少の水害リスクがある地域でも、利便性が高ければ購入する人がいるとのことでした。 駅の近くなら、年齢を重ねて車に乗れなくなっても、鉄道や徒歩で生活できる可能性があります。 土地の広さや安さ以上に、将来の暮らしやすさが評価されているのではないでしょうか。 川沿いや橋の近くでは、水害への懸念も 一方で、同じ水害への懸念がある土地でも、川沿いや橋の近くでは、売却が特に難しいという話も出ました。 以前は、川沿いの景色や開放感を魅力に感じる人もいました。 しかし、ハザードマップで災害リスクが見えるようになると、土地を見る目も変わってきます。 特に印象に残ったのが、橋の近くについての話です。 「大雨のときに流木などが橋に引っかかると、ダムのように水をせき止めてしまう心配がある。 そういう場所は、特に売りにくいんです」 その不動産屋さんは、このように話していました。 もちろん、すべての橋の周辺で同じ危険があるわけではありません。 今回の話も、その業者さんが扱う地域での実感です。実際のリスクは、個々の場所について確認する必要があります。 それでも、駅周辺では利便性が購入の後押しになる一方、川沿いや橋の近くでは、水害への懸念が購入をためらう理由になる。 土地は価格や広さだけでなく、暮らしの便利さと災害リスクを合わせて選ばれるようになっている。 今回の会話から、そんな住宅市場の変化を感じました。 住宅価格だけでなく、土地の選ばれ方が変わっている 今回聞いた話は、一人の不動産業者の現場での実感であり、浜松市全域の成約件数や平均価格を示す統計ではありません。 それでも、非常に興味深い内容でした。 以前は、広い土地に大きな家を建て、川の近くで自然を感じながら暮らすことに、魅力を感じていました。 しかしこれからは、住宅にかけられる予算が限られるなかで、長く安心して住める立地が重視される時代になっていくのかもしれません。 土地は広ければ良いわけでも、安ければ売れるわけでもない。 住宅市場の変化は、すでに私たちの身近なところで始まっているようです。 次回は、かつて憧れだった高台の住宅が、高齢化によって売れにくくなっているという、さらに興味深い話を紹介したいと思います。 協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE 静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/
- 第3回|人口減少と浜松市の街づくり、馬込川の問題
浜松市はなぜ人を駅周辺に集めるのか――人口減少、行政コスト、馬込川の治水対策 不動産屋から聞いた、もう一つの重要な話 浜松市の街づくりは、人口減少と高齢化によってどう変わっていくのでしょうか。 不動産屋さんとの会話をきっかけに、駅周辺への居住誘導、行政コスト、馬込川の治水対策のつながりを考えてみました。 住宅価格が高騰し、土地が売れにくくなっている。 高齢化によって、以前は人気だった高台の住宅地も敬遠され始めている。 そんな話をしているうちに、浜松市の今後の街づくりについて話題が移りました。 そこで聞いたのは、行政が人口減少によるインフラ維持費の増大を心配しているという話でした。 私は、この説明に非常に納得しました。 人口が減るということは、単に街から人がいなくなるということではありません。 これまで大勢の住民が利用していた道路、上下水道、公共施設などを、少ない人数で維持しなければならなくなるということです。 人口が減っても道路や水道管は簡単には減らせない 例えば、1,000人が暮らしていた住宅地の人口が、将来500人になったとします。 人口は半分になっても、道路の長さや水道管の距離が自動的に半分になるわけではありません。 道路の補修、水道管の交換、下水道の管理などは引き続き必要です。 その結果、住民一人当たりの行政サービスの維持コストが上昇する可能性があります。 もちろん、すべての行政費用が固定されているわけではありません。 しかし、人口密度が下がるほど効率が悪くなりやすいインフラがあることは理解できます。 実際、浜松市の「中期財政見通し(令和7年度~令和16年度)」でも、人口減少や少子高齢化に加え、老朽化施設の更新、インフラの長寿命化、災害対応に必要な財政負担の増大が課題として挙げられています。 浜松市の街づくり|駅周辺や生活拠点へ居住を誘導する理由 こうした状況で、新しい住宅地を無制限に広げていけば、将来維持しなければならない道路や上下水道などがさらに増えてしまいます。 それよりも、既存の住宅地や鉄道駅周辺など、すでにインフラが整備された地域を活用した方が、長期的には効率的ではないでしょうか。 浜松市は2019年に「立地適正化計画」を策定し、人口減少や超高齢社会に対応した、コンパクトでメリハリのある街づくりを目指しています。 2026年3月にも計画の一部が変更されました。 ただし、浜松駅周辺だけに住民を集めるという計画ではありません。 浜松市は広い市域を持っていますから、各地域の生活拠点や公共交通を活用し、街全体をどう維持していくかが重要になります。 周辺市町村から転入する人にとっても、駅周辺など既存インフラの整った場所は、暮らしやすい選択肢になるでしょう。 郊外の土地は、これからどうなるのか 不動産屋さんからは、人口の少ない地域では新規の下水道の整備や農地の宅地転用、開発許可についても、以前より難しくなっている場所があるという話を聞きました。 実際に浜松市は、2026年10月15日から11月16日まで、市街化調整区域における開発許可制度の見直し案について市民の意見を募集しています。 ただし、土地の売買が一律に禁止されるわけではなく、農地転用や住宅建築の可否も場所や制度によって異なります。 それでも、将来の人口分布やインフラ維持を見据えた土地利用の見直しが進んでいることは確かです。 土地を持っているだけでは、資産としての価値を維持できない時代が来ているのかもしれません。 しかし、駅周辺にも水害リスクがある ここで、もう一つ大きな問題があります。 不動産屋さんによると、浜松駅周辺は多少の水害リスクがあっても、便利な場所なら高くても売れるそうです。 確かに、駅に近いことは大きな魅力です。 車がなくても移動しやすく、商業施設や医療機関などへアクセスできる。 しかし、ハザードマップを見ると、浜松駅周辺にも浸水が想定される区域があります。 将来、駅周辺や中心市街地に人口を誘導するのであれば、こうした水害リスクへの対策は避けて通れない問題だと思います。 街の中心近くに流れる馬込川の治水対策が重要になる 不動産屋さんとの話では、馬込川についても新たな指定が予定されていると聞きました。 調べてみると、静岡県は馬込川や安間川などについて、2026年度末までに「特定都市河川・特定都市河川流域」へ指定することを目指していると、浜松市が公表しています。 この制度は、河川だけでなく流域全体で水害を抑えるためのものです。 雨水を一時的にためる施設、雨水の流出を抑える開発規制、河川整備などを組み合わせて浸水被害の軽減を目指します。 ただし、指定されるだけで川があふれなくなるわけではありません。 実際の治水工事や排水対策がどこまで進み、浸水リスクがどれだけ下がるのかが重要です。 また、洪水による浸水と、排水が追いつかないことによる内水氾濫は、別々に確認する必要があります。 治水は、これからの街づくりへの投資でもある 私は、馬込川の治水対策には、単なる災害対策以上の意味があると思います。 もし浸水リスクを着実に低下させることができれば、住民の安全性が高まるだけでなく、既存の市街地を安心して活用しやすくなります。 これは、人口減少時代に公共インフラを効率よく維持したい行政の方向性ともつながります。 もちろん、治水事業には莫大な費用と時間がかかります。 また、対策を進めたからといって、必ず不動産価格が上昇するわけでもありません。 しかし、住民の安全を守りながら、将来も維持できる街をつくるという視点では、非常に重要な取り組みだと思います。 日本の街は、これから大きく変わる 今回、不動産屋さんと話していて、一つのことを強く感じました。 人口減少と高齢化は、住宅の売れ行きだけでなく、行政の財政や都市の形まで変えていくのだということです。 土地が売れない。 昔は人気だった高台の住宅が敬遠される。 駅周辺には需要が集まる。 一方で、行政は人口が減った地域のインフラをどう維持するかという問題を抱えている。 すべてがつながっています。 これから日本で重要になるのは、新しい街をどこまで広げられるかではなく、今ある街をどう安全に、持続可能な形で維持していくかということではないでしょうか。 人口減少時代の街づくりとは、これまで広げてきた街を、将来も暮らし続けられる形に作り直すことなのかもしれません。 今回の不動産屋さんとの会話は、浜松市だけでなく、日本全国の将来を考える貴重な機会になりました。 これからも、現場で聞いた話と行政の資料を照らし合わせながら、土地の価値がどう変わっていくのかを調べていきたいと思います。 参考資料 浜松市「立地適正化計画」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/toshikei/rittitekiseika/keikakutop.html 浜松市「中期財政見通し(令和7年度~令和16年度)」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/zaisek/middle/r7-16fp_01.html 浜松市「市街化調整区域における開発許可制度の見直し(案)」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/tochi/pubcomme/kaihatukyokaseido/boshu/index.html 浜松市「特定都市河川について」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kasen/toshikasen/index.html 浜松市「雨水出水浸水想定区域図」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/gesuiken/usuisyussuishinsuisouteikuiki/usuisyussuishinnsuisouteikuiki.html 協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE 静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/
- 第4回|浜松市の人口減少と街づくり――財政・土地利用・馬込川の公式データを調べてみた
不動産屋さんから聞いた話は、行政の公表資料でも裏付けられるのか 浜松市の人口減少は、街づくりや公共施設の維持、土地利用にどのような影響を与えるのでしょうか。今回は、不動産屋さんとの会話をきっかけに、浜松市の公式資料から将来の課題と行政の取り組みを整理しました。 2026年10月、浜松市内の不動産業者と住宅や土地の売れ行きについて話しました。 住宅価格が高騰し、土地が売れにくくなっていること。 高齢化によって、かつて人気だった高台の住宅地が敬遠され始めていること。そして、駅周辺は多少高くても売れているという話です。 さらに話題は、浜松市の人口減少対策や行政財政、馬込川の治水対策にまで広がりました。 そこで今回は、不動産業者の話だけでなく、浜松市自身が公表している資料を調べてみました。 すると、人口減少時代に向けた街づくりの見直しが、すでに具体的に進められていることが分かりました。 1.浜松市の人口減少|2050年には約65万7,000人と推計 浜松市が公表する将来人口推計によると、人口は次のように変化すると予測されています。 年 推計人口 2020年(実績) 790,718人 2030年 752,174人 2040年 707,669人 2050年 657,052人 2020年から2050年までの30年間で約13万4,000人、率にして約16.9%の減少です。 さらに2050年には、65歳以上の人口割合が37.8%になると推計されています。 ここで考えたいのは、人口が減っても、今ある道路や上下水道、橋、公共施設が同じ割合で減るわけではないということです。 人口減少は、住民一人当たりのインフラ維持コストを押し上げる要因になり得ます。 出典:浜松市「将来推計人口(2023年推計)」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/159826/r060517gyokaku01.pdf 2.公共施設を今の規模のまま維持するのは困難 浜松市の「公共施設等総合管理計画」には、特に注目すべき説明があります。 人口減少や年齢構成の変化により公共施設に求められる内容や規模が変わり、現状規模の施設をすべて維持することは、予算や利用状況の面から困難になると想定しています。 これは非常に重要です。 住宅地の人口が減っても、道路、水道管、橋などの維持管理は続きます。 市の財政は現在ただちに危機的というわけではありませんが、将来の負担増を考えれば、施設の配置や維持の仕方を変える必要があります。 私には、不動産屋さんが話していた「行政が人口の集約を進める理由」が、ここにつながっているように感じられました。 出典:浜松市「公共施設等総合管理計画・第2章」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/asset/sougoukanrikeikaku/naiyou2.html 3.2025~2034年度の財政見通しでも収支不足を想定 浜松市は2025年3月に「中期財政見通し」を策定しました。 対象期間は2025年度から2034年度の10年間です。 公表内容では、中期的な収支見通しで収支不足が生じることを踏まえ、各年度の収支均衡を図る方針が示されています。 また、老朽化した公共施設の更新、インフラの長寿命化、災害への対応に必要な財政需要が増大することも明記されています。 つまり、人口減少に備えることは、遠い未来の話ではありません。 行政はすでに、10年単位で財政運営の見直しを考えているのです。 出典:浜松市「中期財政見通し 令和7年度~令和16年度」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/zaisek/middle/r7-16fp_01.html 4.2019年に立地適正化計画を策定、2026年3月にも変更 浜松市は2019年1月に「立地適正化計画」を策定しました。 人口減少、少子化、超高齢社会への対応として、居住、医療、福祉などの都市機能や公共交通を考慮した街づくりを進める計画です。 その後も計画は変更され、2026年3月には第3回変更が行われています。 ここで注意したいのは、すべての人を浜松駅周辺だけに集める計画ではないことです。 浜松市のように面積が広い都市では、複数の生活拠点と公共交通を結びながら、居住や都市機能を維持することが重要になります。 私が以前から注目しているのも、鉄道で中心部へ移動できる立地です。 人口が減少し、高齢者が増える社会では、車を運転できなくなった後も生活できる場所の価値が、相対的に高まる可能性があります。 出典:浜松市「立地適正化計画」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/toshikei/rittitekiseika/keikakutop.html 5.2026年10月、市街化調整区域の開発許可制度見直しへ 今回調べていて、特に注目したのがこの情報です。 浜松市は2026年10月15日から11月16日まで、「市街化調整区域における開発許可制度の見直し案」について、市民から意見を募集しています。 まさに今、土地利用制度の見直しが進められているのです。 今回の不動産屋さんの話では、農地の宅地転用や、新たな住宅の建築が難しくなっている地域があると聞きました。 ただし、農地転用と開発許可は別の制度であり、今回の見直し案によってすべての土地で建築が禁止されるわけではありません。 個々の土地の利用可能性は、区域区分、接道条件、農地法、開発許可基準などによって変わります。 それでも、行政が将来の都市構造に合わせて土地利用を見直しているという事実は、不動産所有者にとっても重要だと思います。 出典:浜松市「市街化調整区域における開発許可制度の見直し(案)」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/tochi/pubcomme/kaihatukyokaseido/boshu/index.html 6.馬込川・安間川は2026年度末までの特定都市河川指定を目指す 最後に、今回の不動産屋さんとの会話でも大きな話題になった、馬込川の問題です。 浜松市の2026年7月30日更新の公式発表によると、静岡県は馬込川と安間川などについて、2026年度末までに「特定都市河川・特定都市河川流域」に指定することを目指しています。 これは、川の氾濫だけでなく、流域全体の雨水流出を抑えるための制度です。 河川整備に加え、雨水貯留・浸透施設の整備、一定規模の開発に対する雨水流出抑制などを組み合わせます。 ただし、指定だけで浸水リスクがなくなるわけではありません。 また、「県内で2番目に危険な川」という順位を意味するものでもありません。 重要なのは、指定後に実際の対策がどこまで進み、住民の安全性がどれだけ改善されるかです。 浜松駅周辺には、ハザードマップ上で浸水が想定される場所もあります。 その一方で、不動産業者によると、駅周辺は水害リスクが多少あっても、利便性が高ければ土地が売れているそうです。 将来も中心部に人が住み続けるためには、居住誘導と治水対策を切り離さずに考える必要があるのではないでしょうか。 出典:浜松市「特定都市河川について」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kasen/toshikasen/index.html 7.今回の公表データから見えてきたこと 今回、浜松市の公式資料を並べてみると、次のことが分かります。 人口減少が予測されている。 高齢者の割合がさらに増える。 公共施設やインフラの維持費が財政上の課題になっている。 行政はすでに居住誘導や土地利用制度の見直しを進めている。 そして、水害リスクを抱える河川についても、新たな対策の枠組みを検討している。 これは、それぞれ別々の問題ではないように思います。 人口が減る時代に、どのような街なら安全で、便利で、将来も維持していけるのか。 その大きな課題に、行政も取り組み始めているのだと感じました。 ただし、郊外で暮らしている人々の生活や財産をどう守るかという問題も残ります。 人口を集約すれば、すべてが解決するわけではありません。 それでも、今回の不動産屋さんとの何気ない会話から、浜松市の将来を考える重要な問題が見えてきました。 私自身、土地の値段だけではなく、行政の計画、人口動態、災害対策、そして将来の暮らしやすさを、これからも調べていきたいと思います。 ※本記事は2026年10月19日時点で確認した公表資料を基に整理しています。 将来人口は推計値であり、今後の実際の人口を確定するものではありません。 不動産市場についての業者の証言と、行政の公式統計・計画は区別して記載しています。 軸になる公表資料一覧 公表資料 確認できる重要な事実 公共施設等総合管理計画 現在の規模の公共施設をすべて維持することは将来困難と想定。 浜松市公式ホームページ 中期財政見通し 2025~2034年度の財政見通しでは収支不足が生じ、老朽化施設やインフラの更新需要が課題。 浜松市公式ホームページ 立地適正化計画 2019年策定、2026年3月に第3回変更。居住や都市機能を誘導。 浜松市公式ホームページ 開発許可制度の見直し 2026年10月15日~11月16日に意見募集を実施。 浜松市公式ホームページ 特定都市河川 馬込川・安間川などの2026年度末までの指定を目指す。 浜松市公式ホームページ 浜松市の資産のすがた 2026年度版も公開。公共資産の保有と管理の状況を把握できる。 浜松市公式ホームページ ここで重要なのは、浜松市の財政がすでに破綻寸前ということではない点です。 公式の公共施設等総合管理計画では、現状の財政指標は良好と評価しつつ、今後の更新費用の増大を警戒しています。 つまり、今回の記事は「浜松市の財政危機」ではなく、将来の負担増を防ぐため、市がすでに都市構造を変えようとしているという切り口が正確です 協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE 静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/
- 第2回|高齢化と住宅の価値――かつて憧れだった高台の家が売れない理由
かつて憧れだった高台の家が売れない――高齢化で逆転する土地の価値 昔は人気だった住宅地でも値下がりしている 高齢化と住宅の価値の関係について、浜松の不動産屋さんとの会話から考えさせられました。 かつて憧れだった高台の家も、老後の暮らしやすさという視点では、評価が変わってきているようです。 不動産屋さんとの話のなかで、私が特に驚いたことがあります。 以前は人気があった住宅地でも、高低差のある場所は価格が下落し、売れにくくなっているそうです。 最初は、造成工事や擁壁などの費用が原因なのかと思いました。 ところが、理由はもっと身近で、切実なものでした。 「年を取ったときに住むのが大変だからです」 この一言には、高齢化社会の現実が凝縮されているように感じました。 駐車場の上に建つ立派な家が売れない 以前は、道路沿いに駐車場をつくり、そこから階段を上った高い場所に住宅を建てることが、一つの憧れでもありました。 道路より高い位置に立派な家があり、玄関へ続く階段がある。 見た目にも風格があり、私も昔なら魅力を感じたと思います。 ところが、今ではこうした住宅が特に売れにくいそうです。 若い頃は何とも思わなかった階段が、年齢を重ねると毎日の負担になるからです。 買い物から帰って荷物を運ぶ。 足腰が悪くなって通院する。 体調を崩す。将来、介護が必要になるかもしれない。 そんなことを考えると、道路から玄関まで階段を上らなければならない住宅には、 購入をためらう人が出てきます。 実際に住めなくなり、売りに出す高齢者も さらに驚いたのは、こうした住宅を購入する人が減っているだけでなく、実際に高齢になって生活が大変になり、売却しようとする人も多いという話です。 長年暮らしてきた愛着のある自宅。 しかし、体力が衰えて階段の上り下りが難しくなる。 そこで平坦で便利な場所に移ろうと考えても、今度は自宅がなかなか売れない。 これは深刻な問題です。 しかも、室内はバリアフリーに改修できても、道路から玄関までの高低差は簡単には変えられません。 住宅そのものより、土地の構造が問題になっているのです。 高台は水害に強くても、老後には不便になる 今回の話で、もう一つ興味深いことを感じました。 水害リスクを考えると、高い場所に住みたいと思うのは自然です。 しかし、坂道が多い高台の住宅地は、高齢になると買い物や通院が大変になります。 一方、平坦で駅に近い住宅地は便利でも、水害リスクを抱えている場所があります。 つまり、安全性と暮らしやすさは、必ずしも一致しないのです。 だからこそ、将来の住宅購入では、土地の高さだけでなく、道路や玄関までの段差、周辺の坂道、交通機関、病院、買い物施設などを総合的に考える必要があるのでしょう。 高齢化と住宅の価値|土地の評価まで変わる理由 私は今回の話で、高齢化という言葉の意味を改めて考えさせられました。 高齢化社会と聞くと、年金、医療、介護などの問題を思い浮かべます。 しかし、それだけではありません。 高齢化は、住宅の形、土地の評価、街の人気まで変えてしまうのです。 昔は価値が高いと考えられていた土地が、今では敬遠される。 逆に、以前は特別な魅力がないと思われていた平坦で駅に近い住宅地が、再評価される。 そんな変化が起きているのかもしれません。 もちろん、高低差のある住宅地がすべて値下がりするとは限りません。 眺望や立地、災害リスクなどによっても評価は変わります。 今回の価格下落についても、具体的な地域の成約データで確かめる必要があります。 それでも、現場でこうした話が出ていることは見逃せません。 30年後も住める家なのか これから住宅を選ぶときに重要になるのは、「今、快適に住めるか」だけではないと思います。 30年後、40年後も、同じ家で無理なく生活できるか。 この問いが、住宅選びの中心になっていくのではないでしょうか。 そして高齢化の影響は、住宅市場だけでは終わりません。 人が住みたい場所が変われば、街の人口分布も変わるからです。 次回は、人口減少によって行政が抱えるインフラ維持費の問題と、浜松市の街づくり、さらに馬込川の治水対策について考えてみたいと思います。 協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE 静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/
- 今だから書ける、コロナワクチン接種について考える
コロナワクチン接種について考えるきっかけになった出来事 当時の経験を振り返り、コロナワクチン接種について改めて考えてみました。 コロナ禍で私が会社を経営していたころ、周囲の会社で社内感染が起きたという話を何度も耳にしました。 一方、私の会社では、社員の約9割がワクチン未接種で、マスク着用も義務づけていませんでした。 それでも、私が把握する限り、社員に感染者は一人も出ませんでした。 さらに不思議に感じたのは、接種済みの家族が感染しても、未接種の社員本人は感染しなかったことです。 こうした経験が、私にとってワクチン接種や感染対策について考えるきっかけになりました。 ただ、この経験だけで、未接種だったから感染しなかった、あるいはマスクが不要だったと証明できるわけではありません。 私が伝えられるのは、当時、自分の会社で実際に見聞きしたことと、そこから生まれた疑問です。 なぜ私は、社員に接種を強く勧めなかったのか コロナのパンデミックが始まり、ヨーロッパで先にワクチン接種が始まったころのことです。 若いころイギリスで暮らし、その後日本に帰国した知人から、イギリスの友人たちが「コロナワクチンは何かおかしい」と話していると聞きました。 その話をきっかけに、私はワクチンについて調べ始めました。 当時は、ワクチンを早く打つよう勧める情報が多く流れていました。 一方で、接種に慎重な意見や、将来への不安を語る人たちもいました。どちらか一方だけを信じるのではなく、できるだけ多くの情報に触れてから考えたいと思ったのです。 私は経営者として、社員に接種を禁止したわけでも、接種を拒むよう求めたわけでもありません。ただ、次のように伝えました。 接種するかどうかを決めるのは本人の自由です。 ただ、勧める情報だけでなく、心配する意見や副反応に関する情報も踏まえて、自分で判断した方がいいと思います。 結果として、私の会社では社員の約9割が接種を受けませんでした。 社員一人ひとりが何を理由に決めたのかは異なるはずですし、私の言葉がどれほど影響したかも分かりません。 この数字だけで、ワクチンが危険だったと証明できるわけではありません。 著名な研究者の発言も、肩書きだけでは判断できない 調べるなかで、ノーベル賞受賞者や、製薬会社で研究に携わった人たちの発言にも行き当たりました。 その中には、リュック・モンタニエ博士や、PCR法の開発者とされる研究者キャリー・マリス博士、ファイザーの元副社長だったマイケル・イードン博士の話もありました。 モンタニエ博士はHIVの発見でノーベル賞を受賞した人物です。 PCR法を開発したキャリー・マリス博士は2019年に亡くなっていましたが、なぜか亡くなる直前にPCRは感染検査には使えないと訴えている動画が上がっていました。新型コロナの発生前でした。ですから、マリス博士本人が「コロナワクチン」について発言したという説明は、動画の内容や出所を確かめる必要があります。 また、マイケル・イードン博士はファイザーのアレルギー・呼吸器研究部門で副社長を務めた経歴がありますが、コロナワクチンの開発部門の責任者だったわけではありません。 肩書きだけで発言の正しさを決めず、どの分野の専門家が、どんな根拠を示して話したのかを見る必要があると、今は考えています。 接種開始前に見た、ドイツの文書 もう一つ、当時の私に強い印象を残したものがあります。 ドイツ内務省が関わった「Wie wir COVID-19 unter Kontrolle bekommen(COVID-19をどう制御下に置くか)」という戦略文書です。 そこには、国民に危機を伝え、対策への協力を促すため、強い印象を与える説明を検討した箇所がありました。 私はこれを、ワクチン接種が始まる前に見ました。文書は実在し、ドイツ連邦議会の記録にも掲載されています。 「まだワクチンが始まっていない時期に、なぜ人々の恐怖に働きかける方法まで考えられているのだろう」。私は、そうした違和感を持ちました。 ただ、この文書から直接、「ワクチン接種に誘導する計画だった」と断定することはできません。読み取れるのは、当時の感染対策への協力を得るため、危機の伝え方が検討されていたということです。 それでも、公的機関が危険を説明する際に、事実を伝えるだけでなく、人々の恐怖を強める方法まで考えていたのなら、その判断や伝え方は検証されるべきだと思います。 さらに驚いたのは、日本でも、この文書に書かれていたものと同じ内容の説明を目にしていたことです。ドイツの文書の存在を知ったとき、日本で聞いていた説明と重なり、「なぜ国が違うのに、ここまで似た伝え方をするのだろう」と驚いたことを覚えています。 当時の判断を、今どう振り返るか 現在も米議会で追及を受けているファウチ博士をめぐる動きを見ても、当時の政策決定や情報発信について、検証が必要だと感じます。 実際、議会ではパンデミック対応やウイルスの起源などをめぐる追及が行われています。 ただし、議会で追及されていることだけで、ワクチンによる健康被害が証明されたわけではありません。 コロナワクチンは感染を完全に防ぐものではなく、接種後に感染することもあります。 一方で、年齢や健康状態によって、感染によるリスクと接種による利益・不利益のバランスは異なります。そうした違いを、もっと丁寧に説明する必要があったと思います。 私が当時社員に伝えたかったのは、接種するかどうかを本人が決めること、そして判断のために複数の情報を見てほしいということでした。 周囲の会社で感染が起きるなか、私の会社では感染者が出なかったことや、接種した家族が感染しても未接種の社員本人は感染しなかったことは、今も印象に残っています。 けれど、それはあくまで私の会社で見聞きした経験です。 接種の有無だけで感染の理由を説明することはできません。 私が書けるのは、その経験から疑問を持ち、調べ、当時どのように判断したかということです。 いずれにせよ、これは過去の話です。私の経験や、当時耳にした情報を振り返ることが、これから先、同じようなことが起きたときにどう考え、どう判断するか。その検討材料の一つになればと思います。 協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE 静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/
- とにかくやってみる――1000記事を目指す中で見えてきた、ホームページ運営の形
私がホームページを始めたのは、2026年7月15日です。過去の記事を再現するため、記事によっては公開日を少しずつ過去に設定しています。 記事を書き続け、ついに900記事目に入りました。下書きも含めると、目標の1000記事が見えてきています。 ここまで続けてきて面白いと感じているのは、最初からテーマを絞り込まず、幅広い話題を記事にしてきたことです。 ホームページの規模が大きくなるにつれて、Googleなどの検索結果に表示される機会が増え、問い合わせも届くようになりました。 私のサイトでは、記事を増やすことが検索で見つけてもらう機会や問い合わせにつながっていると感じています。 もちろん、記事数を増やせば必ず検索順位が上がる、問い合わせが増えるということではありません。これは、私自身がホームページを運営する中で感じていることです。 問い合わせから生まれたページ これまでにつくってきたページの中には、問い合わせをきっかけに広がったものもあります。車や食品のページもそうです。 問い合わせを通じて必要とされているテーマが見えてきたことから、専用ページとしてまとめてきました。 また、「浜松の生きた宝」「遠州の鎮守の森」「日本とモンゴルをつなぐ情報」「かけはしAIラボ」など、取り組みや関心の広がりから生まれた子ページもあります。 これまでに形になったページを、いくつか紹介します。 浜松の生きた宝 日本とモンゴルをつなぐ情報 遠州の鎮守の森 車両情報 食料品情報 不動産情報 記事を書いたり、問い合わせを受けたりする中で必要なテーマが見えてきて、それぞれのページが形になってきました。 記事を書き続ける中で見えてきた流れ 幅広いテーマで記事を書き続けるうちに、反応のよいものや、さらに掘り下げたいテーマが少しずつ見えてきました。 そこからテーマごとの専用ページをつくり、関連する記事へのリンクを集めるようになりました。 最初にすべてを決めてから始めたわけではありません。 記事を書き、反応や問い合わせを見ながら、ホームページの形が少しずつできてきました。 私の場合は、そうした流れの中で今の運営方法に自然とたどり着いたのだと思います。 一見、めちゃくちゃなやり方に見えるかもしれません。 それでも、記事を読んだ人から問い合わせが届くなど、手応えを感じる場面があります。 結果を見ながら続けていくことも、ホームページ運営の一つの形だと感じています。 かかった費用と作業時間 ChatGPTの利用料は、最初の3か月ほどは月額約3,000円、4か月目からは月額約15,000円です。これとは別に、Second Life Viewerを使ったAI受付などに関する費用もかかっています。 ホームページを始めてから最初の2か月ほどは、作業する日に1日約3〜5時間を使っていました。 その後は、記事の作成やホームページの運営に、作業する日は1日約8時間ほどかけるようになりました。 ほかにもやることがあるため、毎日作業していたわけではありません。1日作業を空けることもあります。費用や時間は、いずれも私自身の実感に基づくおおよその数字です。 協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE 静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/
- 撮る前にひと言。それだけで、カメラ付きAIメガネはここまで役立つ――通訳・動画・録音を使って感じたこと
カメラ付きAIメガネを使う前に感じていた不安 カメラ付きのAIメガネと聞くと、撮られる人が不安に感じるのではないか。私も、購入する前はそこに不安を感じていました。 だから私は、動画を撮る前に、本人にこう尋ねます。 「メガネで動画を撮りますが、大丈夫ですか?」 先に許可をいただいてから撮影する。 たったひと言ですが、相手への配慮になりますし、撮る側も気兼ねなく使えます。 スマートフォンを手に持って構える必要がないので、会話の流れを止めずに記録できるのも便利です。 普段はいつものメガネを使い、撮影や通訳が必要なときだけAIメガネにかけ替える。 そう使い分けてみると、これほど便利なものはないと思いました。 3人が話すライブを、Rokid AIメガネの同時通訳でライブを楽しむ 今回、私が改めて驚いたのは、テスラ・ロードスターのライブ配信をロキッドAIメガネの同時通訳で見たときです。 話者は3人。 英語で進む発表を、眼鏡の通訳を聞きながら、ほぼ不自由なく楽しむことができました。 以前なら、英語が分からないと内容を追うだけでも大変でした。 今回は通訳に意識を取られすぎず、発表そのものを楽しめたのです。 下の動画は、そのライブ中に撮影したものではありません。通訳機能の動きを紹介するため、後日あらためてデモとして撮影した映像です。ライブで体験した通訳の便利さを、動画でもご覧ください。 アップデート後に使ってみると、私には、少し前の発話を踏まえて内容を整えてから翻訳しているように感じました。 訳を急いで出すのではなく、わずかな間を置いて、より分かりやすい表現にしてくれる。 その遅れが、かえって聞きやすさにつながっているように思いました。 AIメガネの動画から動画から写真を切り出し、音声も残せる 動画撮影も使いやすい機能です。 高画質で撮っておけば、あとから動画を見返して、良い場面を写真として切り出せます。 撮影中に写真へ切り替えようと慌てずに済むのは、思った以上に楽でした。 さらに、ボイスレコーダーとしても使える 通訳、写真、動画、音声記録。これらを眼鏡で行えるので、スマートフォンを取り出す回数が減ります。 便利さは、相手への配慮と一緒に使いたい カメラ付きAIメガネは、相手に黙って撮影するための道具ではありません。 撮影前にひと言、許可を取って使う そのうえで使えば、会話や出来事を自然な形で記録できる便利な道具になります。 通訳で海外のライブを楽しみ、許可を得て会話を撮り、あとから写真や音声を見返す。 使ってみて感じたのは、AIメガネが単なる眼鏡やカメラではなく、人の体験を支える道具になり始めているということです。 AI機能はアップデートで変わっていきます。 ロキッドの公式案内では、AIアシスタントのモデルとしてChatGPTなどが紹介されています。 一方、翻訳機能には別の翻訳モデル設定があるため、今回のライブ通訳がChatGPTによるものかは、私には確認できていません。 それでも、今回の体験で、言葉の壁を越えてライブを楽しめること、そして撮影や録音の手間まで減らせることを実感しました。 撮る前にひと言、許可をいただく。そこからAIメガネの便利さが広がると感じています。 協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE 静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/
- 大手メガネ店ではすべて門前払い――Rokid AIメガネの遠近両用レンズを完成させた浜松の専門店
以前から使っているRokid(ロキッド)のAIメガネ。 AIの進化を実際に体験できる、非常に面白い製品なのですが、実は一つ、大きな問題を抱えていました。 問題は特殊なクリップオン式フレーム 近くの文字が見えず、AIメガネのアプリを思うように操作できなかったのです。 私は遠くを見る視力については、1.5〜2.0ほどあります。 そのため、遠くを見ることにはほとんど不便を感じません。 ところが、年齢とともに近くの小さな文字が見えづらくなりました。 せっかく新しいAI技術を体験できるメガネを購入しても、その操作が十分にできない。 これは困った問題でした。 Rokid AIメガネとは Rokidは、AIやAR(拡張現実)などの技術を活用したスマートグラスを展開しているメーカーです。 AIメガネは、単に周囲を見るための道具ではなく、新しい情報の受け取り方や、AIとの関わり方を体験できる機器です。 私もこうした技術に興味があり、実際に使いながら、その可能性を研究しています。 Rokid 日本公式サイトはこちら 遠近両用レンズを作るには名古屋か東京へ? 近くの文字が見えない問題を解決するため、Rokid AIメガネに対応したレンズを作ろうと考えました。 しかし、メーカーの案内を確認すると、名古屋か東京にある指定店まで足を運び、目の測定を受ける必要があるようでした。 もちろん、行こうと思えば行けない距離ではありません。 それでも、レンズを作るためだけに名古屋や東京まで出向くのは、なかなか面倒です。 何とか地元でできないものかと思いました。 大手メガネ店では、すべて門前払い そこで、大手のメガネ店にも相談してみました。 ところが、結果はすべて門前払いでした。 Rokidのような特殊なAIメガネの後付けレンズには、対応できないとのことでした。 もちろん、それぞれのお店には取り扱い基準や保証上の事情があるのでしょう。 しかし、私としては困り果てていました。 新しいAI技術がどれほど便利でも、自分の目に合わなければ、その性能を十分に活用できないのです。 天竜区の方が教えてくれた「メガネのウエムラ」 そんなとき、浜松市天竜区のある方に相談すると、 「メガネのウエムラに行ってみれば?」 と教えてくれました。 そこで、さっそく訪ねてみることにしました。 大手のお店で断られていたので、正直、今回も難しいかもしれないと思っていました。 ところが、ウエムラさんの対応は違いました。 すぐに「できません」と断るのではなく、実際のフレームの構造を確認し、真剣に検討してくれたのです。 問題は特殊なクリップオン式フレーム 今回、遠近両用レンズを取り付けてもらったのは、Rokid AIメガネ用のクリップオン式フレームです。 AIメガネ本体のレンズを交換するのではなく、専用の後付けフレームに度付きレンズを組み込む仕組みです。 ところが、このフレームは一般的なメガネとは構造が異なります。 後付けレンズの位置や角度も特殊で、遠近両用レンズとして加工できるかどうかは、かなり微妙なところだったようです。 お店では、どこかに電話をかけて確認している様子もありました。 「何とかできる方法はないか」 そんな姿勢で検討してくださっていることが伝わってきました。 そして、最終的に「何とかできそうです」ということになりました。 ついに遠近両用レンズが完成! そして今回、待ち望んでいたRokid AIメガネ用の遠近両用レンズが完成しました。 大手メガネ店では断られ、名古屋か東京まで行くしかないと思っていた問題が、地元の専門店で解決したのです。 これは本当にありがたい出来事でした。 これまで近くの文字が見えないため、AIメガネのアプリ操作にも苦労していました。 今回のレンズが完成したことで、ようやく普通のメガネのように使いながら、AIの機能も思う存分試せそうです。 ただし、実際に長時間使ったときの見え方や、遠近両用レンズとAI表示の相性については、これから確認していきます。 AIが進化しても、最後に頼りになったのは人の技術 今回、改めて感じたことがあります。 AIが進化すれば、これまで難しかったことが簡単にできるようになります。 しかし、新しい技術を実生活で便利に使えるようにするためには、まだまだ人の知識や経験、技術が欠かせません。 今回のレンズもそうでした。 大手のお店では対応できなかったことを、地元の専門店が真剣に考え、方法を探してくれました。 もちろん、大手メガネ店が悪いという話ではありません。 特殊な製品には、取り扱い上の制約や保証の問題もあるのでしょう。 ただ、私が今回強く感じたのは、 「できない」と判断する前に、「どうすればできるか」を考える姿勢の大切さです。 私は19歳からさまざまな仕事を経験してきましたが、この考え方が仕事においてどれほど重要か、何度も感じてきました。 AIがどれだけ進化しても、こうした専門家の経験と判断力、そして人のために工夫しようとする姿勢には、大きな価値があると思います。 今回お世話になった「メガネのウエムラ」 今回、Rokid AIメガネのクリップオン式フレームに遠近両用レンズを作っていただいたのは、浜松市天竜区二俣町にある「メガネのウエムラ」さんです。 特殊な製品にもかかわらず、真剣に対応方法を検討していただきました。 地元にこうした専門店があることを、今回初めて知りました。 本当にありがとうございました。 メガネのウエムラ Googleマップで店舗を見る ※今回の記事は、私自身のRokid AIメガネでの体験です。すべてのRokid製品やレンズについて、同じ加工ができるという意味ではありません。 これからは、完成した遠近両用レンズを使って、Rokid AIメガネの機能をさらに試していこうと思います。 そして、その使い心地や新しい発見についても、今後記事で紹介していきたいと思います。 最新のAI技術と、地元の専門店が持つ長年の技術。 今回の出来事は、その両方の価値を改めて教えてくれました。 協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE 静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/
- シベリア抑留の食事は黒パン100グラムを1日2回だった――100歳の証言を聞いて私が考えたこと
シベリア抑留の食事について本人に聞いたこと。 この二つを結び付けて考えるつもりは、最初はまったくありませんでした。 100歳のおじいさんから、満州、奉天、カラガンダ、そして旧ソ連での抑留生活について話を聞いてきました。 前の記事では、その人生をできるだけ本人の言葉に沿って記録しました。 しかし、話を聞いているうちに、私の頭からどうしても離れないことが一つありました。 それは、 「人間の身体には、本当はどれくらいの食事が必要なのだろう」 という疑問です。 黒パン100グラムほど、それが1日2回 カラガンダでの食事について、本人には何度か確認しました。 黒パンなら、 100グラム。 それが一日2回。 もう一つのメニューは、飯盒容器に半分くらいのご飯に白湯だったそうです。 おかずはありません。 仕事量が多い人に特別な追加配給があったのかも聞きました。 本人は、 「なかった」 とはっきり答えています。 今の感覚で考えれば、到底それだけで足りるとは思えません。 しかも、じっとしていたわけではありません。 炭鉱で働いていたのです。 それでも炭鉱で約2年間働いた 本人の話では、カラガンダにはおよそ2年間いたそうです。 炭鉱の仕事は当然、身体を使います。 それだけの食事で、どうして仕事を続けることができたのか。 私はそこが不思議でなりませんでした。 本人は炭鉱について、 「暖かかったから良かった」 と何度も話します。 外はマイナス40℃近くになることもあった。 しかし地下の炭鉱は暖かかった。 一方、屋外で木材の伐採に回された人たちは、厳しい寒さの中で多く亡くなったという記憶が残っています。 そして私がさらに気になったのが、 本人の話の中には、「食べ物がなくて餓死した」という話が出てこない ことでした。 本人の記憶に強く残っているのは「飢え」より「寒さ」 もちろん、これは本人がいた場所、本人が見聞きした範囲の話です。 旧ソ連の抑留全体について、 「餓死した人はいなかった」 などと言うつもりはありません。 ただ、本人の80年以上前の記憶の中で、死と結びついて強く残っているのは、 飢えより、屋外の猛烈な寒さなのです。 炭鉱は暖かかった。 伐採は寒かった。 そして伐採へ回された人たちが亡くなった。 この話を何度か聞いているうちに、 食料が少ない極限状態では、体温を維持できる環境が想像以上に重要だったのではないか とも考えるようになりました。 そして、その本人が今100歳 さらに考えさせられるのが、その後です。 この方は100歳になった今も、自分の足で歩きます。 毎朝5時半ごろには公園へ来て、掃除をしています。 足腰もしっかりしています。 80年以上前には、極端に少ない食事で炭鉱の仕事をしていた。 それでも生きて日本へ帰り、100歳まで生きている。 目の前の本人を見ると、 「人間の身体というものは、私たちが思っている以上に環境へ適応する力があるのではないか」 という考えがどうしても浮かんできます。 だからといって「食べなくていい」という話ではない ここは誤解されたくありません。 私は、 「黒パン200グラム程度で十分だ」 と言っているわけではありません。 また、 「少食だったから100歳まで生きた」 と結論づけるつもりもありません。 本人が100歳まで生きた理由には、体質、遺伝、生活習慣、運動、人とのつながりなど、さまざまな要因があるでしょう。 今目の前にいる一人だけを見て、 「これが長寿の方法だ」 と考えるのは違うと思います。 それでも、 実際にそういう人生を生き抜いた100歳の人が目の前にいる。 その事実は、私にいろいろな疑問を投げかけます。 今の私たちは、本当に必要な量を食べているのだろうか 現代の私たちは、 朝食。 昼食。 夕食。 間食。 飲み物。 いつでも食べ物が手に入ります。 そして、 「一日にこれくらい食べなければならない」 という数字にも囲まれています。 もちろん、栄養についての知識は大切です。 しかし100歳の方の話を聞いていると、私は別の疑問も持ちます。 必要だから食べているのか。 それとも、 食べられる環境にいるから食べているのか。 この二つは、同じではないのかもしれません。 「生きられる量」と「健康に必要な量」は別 一方で、ここも分けて考えなければなりません。 人間が極端に少ない食事でも生き延びられることと、 その食事が健康的であることは別です。 今回の話から分かるのは、 人間が極限環境で驚くほど適応する場合がある ということまででしょう。 では、その適応はどういう仕組みなのか。 若かったからなのか。 身体が消費エネルギーを抑えたのか。 暖かい炭鉱だったことが大きかったのか。 それとも、私たちがまだ知らない人間の身体の仕組みがあるのか。 私には分かりません。 だからこそ、面白いのです。 100歳の本人を見ながら考える 数字だけなら、ネットでいくらでも調べられます。 必要カロリー。 基礎代謝。 栄養素。 寒冷環境でのエネルギー消費。 しかし今回は、それとは少し違います。 100歳になった本人が目の前に座って、自分の経験を話している。 そして翌朝になれば、また公園へ来て掃除をする。 私はそこに、数字だけでは説明しきれない何かを感じます。 答えを決めつける必要はないと思っています。 むしろ、 「なぜなのだろう」 という疑問を残しておきたい。 100歳の人生から、私が考えたこと 今回の話を聞いて、私が感じたのは、 人間は思っている以上に強い。 そして、 人間の身体について、私たちはまだ分かっていないことがたくさんあるのではないか。 ということでした。 快適な環境。 十分な食事。 便利な生活。 それらはもちろんありがたいものです。 しかし、100歳の方の人生を聞いていると、 人間にとって本当に必要なものは何なのだろう。 そんなことを、改めて考えさせられます。 結論はまだありません。 ただ、100歳になった今も毎朝公園を掃除している本人を見ながら、 「人間というものは、私たちが考えている以上にたくましいのかもしれない」 と思っています。 協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE 静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/
- 100歳のおじいさんの記憶が一本の線につながり始めた――満州、奉天、そしてカラガンダへ
100歳の男性が語るシベリア抑留の記憶 私は毎朝5時半から6時ごろ、犬の散歩をしています。 その時間になると、公園を掃除している方々がいます。 その中に、100歳になるおじいさんがいます。 今でも自分の足で歩き、毎朝のように公園へ来て掃除をしている方です。 以前、私がしばらくモンゴルへ行っていて公園に姿を見せなかったときには、帰国して久しぶりに会った私の背中をポンポンとたたき、とても喜んでくれました。 そこから少しずつ話をするようになり、私はこの方が若いころに経験した、驚くような人生を知ることになりました。 前回の記事では、戦争が終わったあと旧ソ連へ送られ、現在のカザフスタンにあるカラガンダの炭鉱で約2年間を過ごした話を中心に紹介しました。 そしてその後、本人が自宅で大切に保管していた新聞記事や戦争関係の資料を、わざわざ私のところまで届けてくれました。 満州についての記事。 シベリア抑留の記事。 カラガンダが記された地図。 強制労働についての記事。 そして、ご本人自身が以前インタビューを受けた新聞記事も含まれていました。 今日は、今度はこちらからご自宅を訪ねました。 玄関を開けると、いつものような優しい表情で迎えてくれました。 公園での立ち話では断片的だった記憶も、今日は資料を見せてもらいながら、最初から順番にゆっくり聞くことができました。 すると、今まで点だった話が、ようやく一本の線になり始めました。 16歳ごろ、満蒙開拓青少年義勇軍へ志願 今回、本人は、 「志願したのは16歳」 と話していました。 過去の資料には年齢について少し異なる記述もあるため、正確な年齢や年については、もう一度確認してみたいと思っています。 いずれにしても、今でいえば中高生ほどの年齢で、自ら志願して満州へ向かったことになります。 志願したあと、まず行ったのは海外ではありませんでした。 茨城県にあった、 満蒙開拓青少年義勇軍の訓練所 へ入ったそうです。 そこで約3か月間、さまざまな訓練を受けました。 そして6月ごろ、日本を出発します。 本人の話では福井県の港から出たとのことでした。 以前届けてもらった資料には敦賀の名前も出ているため、ここも今後もう一度確認してみたいと思っています。 朝鮮へ渡り、満州鉄道で北の国境へ 福井から海を渡り、まず朝鮮へ。 そこから満州鉄道に乗ったそうです。 列車は北へ北へと進み、 本人の言葉では、 「一番上の国境まで行った」 といいます。 国境近くには訓練所があり、そこで約4年間を過ごしたそうです。 この方は、当時の地名を本当によく覚えています。 以前、公園で話を聞いたときも、次から次へと地名が出てきました。 聞いていた私だけでなく、周りにいた方たちまで覚えきれず、思わず笑ってしまったほどです。 100歳の本人の方が、80年以上前の地名を私たちよりよく覚えている。 これには本当に驚かされます。 20歳ごろ、奉天の通信兵部隊へ 国境近くで約4年間を過ごしたあと、20歳ごろに関東軍の検査を受けたそうです。 そして今度は南へ下りました。 行き先は、 奉天。 現在の中国・瀋陽です。 奉天では通信兵の部隊に入りました。 本人の記憶では、そこにいたのは約3か月。 そして、その奉天で終戦を迎えます。 今回の聞き取りで、 「日本の敗戦を迎えた場所は奉天だった」 ということが、かなりはっきりしました。 「戦争が終わった。これで日本へ帰れる」 終戦。 本人は当然、 「これで日本へ帰れる」 と思ったそうです。 しかし、実際には帰ることができませんでした。 本人の話では、朝鮮方面を通って帰ることができず、旧ソ連側へ送られることになったといいます。 ここからの話には、 ウラジオストク そして、 ナホトカ という地名が出てきました。 移動に使われたのは普通の客車ではありません。 貨物列車です。 しかも大勢の日本人が、 すし詰めにされた状態 だったそうです。 この移送についてだけは、本人も、 「あれはひどかった。つらかった」 とはっきり話していました。 昔の厳しい経験について、普段はそれほど辛そうに話さない方です。 その方がはっきり「つらかった」と言う。 私はそこが強く印象に残りました。 列車は、日本とは反対方向へ進んでいった 日本へ帰れると思っていた。 ところが列車は、日本へ向かいませんでした。 本人の表現では、 「反対側へ行ってしまった」 そうです。 列車は旧ソ連の奥へ奥へと進みます。 話の中には、 バイカル湖 という名前も出てきました。 そして長い移動の末にたどり着いたのが、 カラガンダ。 現在のカザフスタンにある炭鉱の街です。 本人はそこで、およそ2年間を過ごしました。 「炭鉱は暖かかったから良かった」 カラガンダでは炭鉱の仕事に就いたそうです。 冬の外は非常に寒く、以前聞いた話ではマイナス40℃近くになることもあったといいます。 ところが炭鉱について聞くと、本人は意外なことを言います。 「炭鉱は暖かかったから良かった」 というのです。 地下なので、猛烈な寒さの屋外と比べれば暖かい。 本人にとっては、それがかなり大きかったようです。 一方、屋外で木材の伐採に回された捕虜については、厳しい寒さの中で働かなければならず、多くの人が亡くなったと記憶しています。 ここについては、 本人が実際に見たことなのか。 当時、周囲から聞いた話なのか。 そこも今後もう少し詳しく聞いてみたいと思っています。 「ロシア人の方が良かった」 以前から、本人が何度か話していた言葉があります。 「ロシア人の方が良かった」 最初に聞いたとき、私は少し驚きました。 戦争に負け、旧ソ連へ送られ、捕虜として暮らした人です。 普通に考えれば、ロシア人に対する悪い記憶が残っていても不思議ではありません。 ところが、詳しく聞いてみると、この言葉の意味が分かってきました。 本人が比較していたのは、中国側の人たちや、そして日本人の上官だったようです。 本人によれば、捕虜になったあとも、日本人上官の中には部下に暴力を振るったり、威張ったりする人がいたそうです。 戦争に負け、全員が捕虜という立場になっても、それまでの上下関係を引きずっていた人がいた。 そんな経験と比べて、 「ロシア人の方が扱いは良かった」 という記憶が残っているようです。 私は、この話を「どこの国が良い」「どこの国が悪い」という単純な話にはしたくありません。 極限状態に置かれた一人の人間が、 誰が自分にどう接したのか。 80年以上たった今でも、それを覚えている。 そこに、この証言の意味があるように感じています。 カラガンダには約2年 今回、 「ロシアにはどのくらいいたんですか」 と改めて聞いてみました。 本人の答えは、 「2年くらい」 でした。 厳密には2年より少し短かった可能性もありそうですが、おおよそ2年間だったという記憶です。 そして本人は、 比較的早く日本へ帰ることができた と考えています。 同じ収容所には、広島や四国などから来た部隊の人たちもいたそうです。 本人の記憶では、その人たちが帰国することになり、 「同じ収容所にいたから、自分も一緒に帰れたのだと思う」 と話していました。 以前、 「早く帰れて良かった」 と言っていた理由も、このあたりにあるようです。 ただし、なぜその部隊が帰還することになったのかについては、本人の記憶だけで断定せず、今後資料とも照らし合わせてみたいと思っています。 本人が資料を届けてくれたこと 今回、私は戦争の資料そのものにも興味を持ちました。 しかし、それ以上にうれしかったことがあります。 本人が、自分で長い間大切に保管してきた新聞記事や戦争関係の資料を、わざわざ私のところまで届けてくれたことです。 前回の記事を書いたことで、 「もう少し話しておこう」 と思ってくれたのかもしれません。 本人がそう言ったわけではありません。 それでも、私にはそんなふうに感じられました。 そして今日は、今度は私がご自宅へ伺いました。 玄関で迎えてくれた100歳のおじいさんと、資料を見ながら話をしていると、 公園でいつも会っている人の中に、こんなにも長い歴史が残っているのだと、改めて感じました。 100歳の今も、毎朝公園を掃除している 満州へ渡った少年時代。 奉天で迎えた終戦。 帰国できると思った直後の抑留。 すし詰めの貨物列車。 ウラジオストク。 バイカル湖。 そしてカラガンダ。 炭鉱での約2年間。 その話をしている本人が、今は100歳です。 そして今でも毎朝5時半ごろになると、公園へ来て掃除をしています。 私は最初、この方がそんな人生を歩んできたとは全く知りませんでした。 ただ、毎朝公園をきれいにしている元気なおじいさんだと思っていました。 しかし、少し話を聞いただけで、その人の中から80年以上前の歴史が次々と出てきた。 人は、見ただけでは本当に分からないものだと思います。 分からないことは、分からないまま残す 今回の聞き取りで、かなり多くのことがつながりました。 一方で、まだ確認したい部分もあります。 志願した正確な年齢と年。 北の国境近くにあった訓練所の場所。 奉天で所属していた通信兵部隊の正式名称。 奉天からウラジオストク、ナホトカ、バイカル湖、カラガンダまでの正確な経路。 帰国に至った詳しい経緯。 これらを、私の想像で埋めるつもりはありません。 本人が話したこと。 本人が保管していた資料に書かれていること。 歴史資料で確認できたこと。 この三つを分けながら、一つずつ確かめたいと思っています。 100歳になった今も、本人の中には驚くほど鮮明な記憶があります。 次に会ったときには、また続きを聞かせてもらおうと思っています。 そして今度も、私が覚えるのではなく、きちんと記録として残していきたいと思います。 【新聞資料集を読む|PDF・全26ページ】 ※資料は別画面で閲覧できます。 そして、この記事を書きながら思ったこと 今回、100歳のおじいさんから話を聞き、資料を見せてもらい、地名や時代背景を一つずつ確認しながら記事にしていきました。 少し前なら、これだけの内容をまとめるには、かなりの時間と知識が必要だったと思います。 歴史を調べる人。 文章を書く人。 資料を整理する人。 画像を作る人。 それぞれの力が必要でした。 しかし今は、AIを使えば、こんな複雑な記事でも一人でも数時間のうちに形にできます。 そう考えると、これからは「頭が良い」という意味そのものが、少しずつ変わっていくのかもしれません。 たくさん覚えていること。 文章を速く書けること。 資料をきれいに整理できること。 もちろん、どれも大切です。 でも、それ以上に大事になるのは、 何に気づくか。 何を疑問に思うか。 誰に何を聞くか。 そして、集まった情報の中から何を残し、何を捨てるか。 そんな「判断する力」なのかもしれません。 これからは、 「自分で全部できる人」より、「何をやるべきかを見つけて、AIを使って形にできる人」 の方が強くなる時代なのかもしれない。 今回の記事を作りながら、私はそんなことも感じました。 協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE 静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/












