第4回|浜松市の人口減少と街づくり――財政・土地利用・馬込川の公式データを調べてみた

不動産屋さんから聞いた話は、行政の公表資料でも裏付けられるのか
浜松市の人口減少は、街づくりや公共施設の維持、土地利用にどのような影響を与えるのでしょうか。今回は、不動産屋さんとの会話をきっかけに、浜松市の公式資料から将来の課題と行政の取り組みを整理しました。
2026年10月、浜松市内の不動産業者と住宅や土地の売れ行きについて話しました。
住宅価格が高騰し、土地が売れにくくなっていること。
高齢化によって、かつて人気だった高台の住宅地が敬遠され始めていること。そして、駅周辺は多少高くても売れているという話です。
さらに話題は、浜松市の人口減少対策や行政財政、馬込川の治水対策にまで広がりました。
そこで今回は、不動産業者の話だけでなく、浜松市自身が公表している資料を調べてみました。
すると、人口減少時代に向けた街づくりの見直しが、すでに具体的に進められていることが分かりました。
1.浜松市の人口減少|2050年には約65万7,000人と推計
浜松市が公表する将来人口推計によると、人口は次のように変化すると予測されています。

年 | 推計人口 |
2020年(実績) | 790,718人 |
2030年 | 752,174人 |
2040年 | 707,669人 |
2050年 | 657,052人 |
2020年から2050年までの30年間で約13万4,000人、率にして約16.9%の減少です。
さらに2050年には、65歳以上の人口割合が37.8%になると推計されています。
ここで考えたいのは、人口が減っても、今ある道路や上下水道、橋、公共施設が同じ割合で減るわけではないということです。
人口減少は、住民一人当たりのインフラ維持コストを押し上げる要因になり得ます。
出典:浜松市「将来推計人口(2023年推計)」
2.公共施設を今の規模のまま維持するのは困難
浜松市の「公共施設等総合管理計画」には、特に注目すべき説明があります。
人口減少や年齢構成の変化により公共施設に求められる内容や規模が変わり、現状規模の施設をすべて維持することは、予算や利用状況の面から困難になると想定しています。
これは非常に重要です。
住宅地の人口が減っても、道路、水道管、橋などの維持管理は続きます。
市の財政は現在ただちに危機的というわけではありませんが、将来の負担増を考えれば、施設の配置や維持の仕方を変える必要があります。
私には、不動産屋さんが話していた「行政が人口の集約を進める理由」が、ここにつながっているように感じられました。
出典:浜松市「公共施設等総合管理計画・第2章」
3.2025~2034年度の財政見通しでも収支不足を想定
浜松市は2025年3月に「中期財政見通し」を策定しました。
対象期間は2025年度から2034年度の10年間です。
公表内容では、中期的な収支見通しで収支不足が生じることを踏まえ、各年度の収支均衡を図る方針が示されています。
また、老朽化した公共施設の更新、インフラの長寿命化、災害への対応に必要な財政需要が増大することも明記されています。
つまり、人口減少に備えることは、遠い未来の話ではありません。
行政はすでに、10年単位で財政運営の見直しを考えているのです。
出典:浜松市「中期財政見通し 令和7年度~令和16年度」
4.2019年に立地適正化計画を策定、2026年3月にも変更
浜松市は2019年1月に「立地適正化計画」を策定しました。
人口減少、少子化、超高齢社会への対応として、居住、医療、福祉などの都市機能や公共交通を考慮した街づくりを進める計画です。
その後も計画は変更され、2026年3月には第3回変更が行われています。
ここで注意したいのは、すべての人を浜松駅周辺だけに集める計画ではないことです。
浜松市のように面積が広い都市では、複数の生活拠点と公共交通を結びながら、居住や都市機能を維持することが重要になります。
私が以前から注目しているのも、鉄道で中心部へ移動できる立地です。
人口が減少し、高齢者が増える社会では、車を運転できなくなった後も生活できる場所の価値が、相対的に高まる可能性があります。
出典:浜松市「立地適正化計画」
5.2026年10月、市街化調整区域の開発許可制度見直しへ
今回調べていて、特に注目したのがこの情報です。
浜松市は2026年10月15日から11月16日まで、「市街化調整区域における開発許可制度の見直し案」について、市民から意見を募集しています。
まさに今、土地利用制度の見直しが進められているのです。
今回の不動産屋さんの話では、農地の宅地転用や、新たな住宅の建築が難しくなっている地域があると聞きました。
ただし、農地転用と開発許可は別の制度であり、今回の見直し案によってすべての土地で建築が禁止されるわけではありません。
個々の土地の利用可能性は、区域区分、接道条件、農地法、開発許可基準などによって変わります。
それでも、行政が将来の都市構造に合わせて土地利用を見直しているという事実は、不動産所有者にとっても重要だと思います。
出典:浜松市「市街化調整区域における開発許可制度の見直し(案)」
6.馬込川・安間川は2026年度末までの特定都市河川指定を目指す
最後に、今回の不動産屋さんとの会話でも大きな話題になった、馬込川の問題です。
浜松市の2026年7月30日更新の公式発表によると、静岡県は馬込川と安間川などについて、2026年度末までに「特定都市河川・特定都市河川流域」に指定することを目指しています。
これは、川の氾濫だけでなく、流域全体の雨水流出を抑えるための制度です。
河川整備に加え、雨水貯留・浸透施設の整備、一定規模の開発に対する雨水流出抑制などを組み合わせます。
ただし、指定だけで浸水リスクがなくなるわけではありません。
また、「県内で2番目に危険な川」という順位を意味するものでもありません。
重要なのは、指定後に実際の対策がどこまで進み、住民の安全性がどれだけ改善されるかです。
浜松駅周辺には、ハザードマップ上で浸水が想定される場所もあります。
その一方で、不動産業者によると、駅周辺は水害リスクが多少あっても、利便性が高ければ土地が売れているそうです。
将来も中心部に人が住み続けるためには、居住誘導と治水対策を切り離さずに考える必要があるのではないでしょうか。
出典:浜松市「特定都市河川について」
7.今回の公表データから見えてきたこと
今回、浜松市の公式資料を並べてみると、次のことが分かります。
人口減少が予測されている。
高齢者の割合がさらに増える。
公共施設やインフラの維持費が財政上の課題になっている。
行政はすでに居住誘導や土地利用制度の見直しを進めている。
そして、水害リスクを抱える河川についても、新たな対策の枠組みを検討している。
これは、それぞれ別々の問題ではないように思います。
人口が減る時代に、どのような街なら安全で、便利で、将来も維持していけるのか。
その大きな課題に、行政も取り組み始めているのだと感じました。
ただし、郊外で暮らしている人々の生活や財産をどう守るかという問題も残ります。
人口を集約すれば、すべてが解決するわけではありません。
それでも、今回の不動産屋さんとの何気ない会話から、浜松市の将来を考える重要な問題が見えてきました。
私自身、土地の値段だけではなく、行政の計画、人口動態、災害対策、そして将来の暮らしやすさを、これからも調べていきたいと思います。
※本記事は2026年10月19日時点で確認した公表資料を基に整理しています。
将来人口は推計値であり、今後の実際の人口を確定するものではありません。
不動産市場についての業者の証言と、行政の公式統計・計画は区別して記載しています。
軸になる公表資料一覧
公表資料 | 確認できる重要な事実 |
現在の規模の公共施設をすべて維持することは将来困難と想定。 浜松市公式ホームページ | |
2025~2034年度の財政見通しでは収支不足が生じ、老朽化施設やインフラの更新需要が課題。 浜松市公式ホームページ | |
2019年策定、2026年3月に第3回変更。居住や都市機能を誘導。 浜松市公式ホームページ | |
2026年10月15日~11月16日に意見募集を実施。 浜松市公式ホームページ | |
馬込川・安間川などの2026年度末までの指定を目指す。 浜松市公式ホームページ | |
2026年度版も公開。公共資産の保有と管理の状況を把握できる。 浜松市公式ホームページ |
ここで重要なのは、浜松市の財政がすでに破綻寸前ということではない点です。
公式の公共施設等総合管理計画では、現状の財政指標は良好と評価しつつ、今後の更新費用の増大を警戒しています。
つまり、今回の記事は「浜松市の財政危機」ではなく、将来の負担増を防ぐため、市がすでに都市構造を変えようとしているという切り口が正確です
協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE
静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/





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