第3回|人口減少と浜松市の街づくり、馬込川の問題

浜松市はなぜ人を駅周辺に集めるのか――人口減少、行政コスト、馬込川の治水対策
不動産屋から聞いた、もう一つの重要な話
浜松市の街づくりは、人口減少と高齢化によってどう変わっていくのでしょうか。
不動産屋さんとの会話をきっかけに、駅周辺への居住誘導、行政コスト、馬込川の治水対策のつながりを考えてみました。
住宅価格が高騰し、土地が売れにくくなっている。
高齢化によって、以前は人気だった高台の住宅地も敬遠され始めている。
そんな話をしているうちに、浜松市の今後の街づくりについて話題が移りました。
そこで聞いたのは、行政が人口減少によるインフラ維持費の増大を心配しているという話でした。
私は、この説明に非常に納得しました。
人口が減るということは、単に街から人がいなくなるということではありません。
これまで大勢の住民が利用していた道路、上下水道、公共施設などを、少ない人数で維持しなければならなくなるということです。
人口が減っても道路や水道管は簡単には減らせない
例えば、1,000人が暮らしていた住宅地の人口が、将来500人になったとします。
人口は半分になっても、道路の長さや水道管の距離が自動的に半分になるわけではありません。
道路の補修、水道管の交換、下水道の管理などは引き続き必要です。
その結果、住民一人当たりの行政サービスの維持コストが上昇する可能性があります。
もちろん、すべての行政費用が固定されているわけではありません。
しかし、人口密度が下がるほど効率が悪くなりやすいインフラがあることは理解できます。
実際、浜松市の「中期財政見通し(令和7年度~令和16年度)」でも、人口減少や少子高齢化に加え、老朽化施設の更新、インフラの長寿命化、災害対応に必要な財政負担の増大が課題として挙げられています。
浜松市の街づくり|駅周辺や生活拠点へ居住を誘導する理由
こうした状況で、新しい住宅地を無制限に広げていけば、将来維持しなければならない道路や上下水道などがさらに増えてしまいます。
それよりも、既存の住宅地や鉄道駅周辺など、すでにインフラが整備された地域を活用した方が、長期的には効率的ではないでしょうか。
浜松市は2019年に「立地適正化計画」を策定し、人口減少や超高齢社会に対応した、コンパクトでメリハリのある街づくりを目指しています。
2026年3月にも計画の一部が変更されました。
ただし、浜松駅周辺だけに住民を集めるという計画ではありません。
浜松市は広い市域を持っていますから、各地域の生活拠点や公共交通を活用し、街全体をどう維持していくかが重要になります。
周辺市町村から転入する人にとっても、駅周辺など既存インフラの整った場所は、暮らしやすい選択肢になるでしょう。
郊外の土地は、これからどうなるのか
不動産屋さんからは、人口の少ない地域では新規の下水道の整備や農地の宅地転用、開発許可についても、以前より難しくなっている場所があるという話を聞きました。
実際に浜松市は、2026年10月15日から11月16日まで、市街化調整区域における開発許可制度の見直し案について市民の意見を募集しています。
ただし、土地の売買が一律に禁止されるわけではなく、農地転用や住宅建築の可否も場所や制度によって異なります。
それでも、将来の人口分布やインフラ維持を見据えた土地利用の見直しが進んでいることは確かです。
土地を持っているだけでは、資産としての価値を維持できない時代が来ているのかもしれません。
しかし、駅周辺にも水害リスクがある
ここで、もう一つ大きな問題があります。
不動産屋さんによると、浜松駅周辺は多少の水害リスクがあっても、便利な場所なら高くても売れるそうです。
確かに、駅に近いことは大きな魅力です。
車がなくても移動しやすく、商業施設や医療機関などへアクセスできる。
しかし、ハザードマップを見ると、浜松駅周辺にも浸水が想定される区域があります。
将来、駅周辺や中心市街地に人口を誘導するのであれば、こうした水害リスクへの対策は避けて通れない問題だと思います。
街の中心近くに流れる馬込川の治水対策が重要になる
不動産屋さんとの話では、馬込川についても新たな指定が予定されていると聞きました。
調べてみると、静岡県は馬込川や安間川などについて、2026年度末までに「特定都市河川・特定都市河川流域」へ指定することを目指していると、浜松市が公表しています。
この制度は、河川だけでなく流域全体で水害を抑えるためのものです。
雨水を一時的にためる施設、雨水の流出を抑える開発規制、河川整備などを組み合わせて浸水被害の軽減を目指します。
ただし、指定されるだけで川があふれなくなるわけではありません。
実際の治水工事や排水対策がどこまで進み、浸水リスクがどれだけ下がるのかが重要です。
また、洪水による浸水と、排水が追いつかないことによる内水氾濫は、別々に確認する必要があります。
治水は、これからの街づくりへの投資でもある
私は、馬込川の治水対策には、単なる災害対策以上の意味があると思います。
もし浸水リスクを着実に低下させることができれば、住民の安全性が高まるだけでなく、既存の市街地を安心して活用しやすくなります。
これは、人口減少時代に公共インフラを効率よく維持したい行政の方向性ともつながります。
もちろん、治水事業には莫大な費用と時間がかかります。
また、対策を進めたからといって、必ず不動産価格が上昇するわけでもありません。
しかし、住民の安全を守りながら、将来も維持できる街をつくるという視点では、非常に重要な取り組みだと思います。
日本の街は、これから大きく変わる
今回、不動産屋さんと話していて、一つのことを強く感じました。
人口減少と高齢化は、住宅の売れ行きだけでなく、行政の財政や都市の形まで変えていくのだということです。
土地が売れない。
昔は人気だった高台の住宅が敬遠される。
駅周辺には需要が集まる。
一方で、行政は人口が減った地域のインフラをどう維持するかという問題を抱えている。
すべてがつながっています。
これから日本で重要になるのは、新しい街をどこまで広げられるかではなく、今ある街をどう安全に、持続可能な形で維持していくかということではないでしょうか。
人口減少時代の街づくりとは、これまで広げてきた街を、将来も暮らし続けられる形に作り直すことなのかもしれません。
今回の不動産屋さんとの会話は、浜松市だけでなく、日本全国の将来を考える貴重な機会になりました。
これからも、現場で聞いた話と行政の資料を照らし合わせながら、土地の価値がどう変わっていくのかを調べていきたいと思います。
参考資料
浜松市「立地適正化計画」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/toshikei/rittitekiseika/keikakutop.html
浜松市「中期財政見通し(令和7年度~令和16年度)」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/zaisek/middle/r7-16fp_01.html
浜松市「市街化調整区域における開発許可制度の見直し(案)」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/tochi/pubcomme/kaihatukyokaseido/boshu/index.html
浜松市「特定都市河川について」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kasen/toshikasen/index.html
浜松市「雨水出水浸水想定区域図」 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/gesuiken/usuisyussuishinsuisouteikuiki/usuisyussuishinnsuisouteikuiki.html
協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE
静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/





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