実は3年前にも約8割が焼けたモンゴルの保護区火災――なぜ今回は騒ぎが大きいのか

モンゴル東部のヌムルグ自然保護区で発生した大規模火災。
KDDIの子会社モビコムの活動に関連して発生し、企業の説明や責任をめぐって注目が集まっています。
このニュースについて、モンゴルの知り合いから、こんな話を聞きました。
「3年前にも、同じ保護区で8割近くが焼けた。そのときと比べて、今回の騒がれ方には何か違和感がある」
私が話した、比較的生活に余裕のある知人たちの中にも、同様の疑問を口にする人がいました。
もちろん、これは私の身近な人たちの声であり、モンゴル国民全体の意見ではありません。
しかし、今回の出来事を考えるうえで、気になる視点でした。
2023年にも、保護区の約76%が火災に遭っていた
調べてみると、知人の話には裏付けがありました。
現地メディアの比較によると、2023年にはヌムルグ自然保護区の約44万7,000ヘクタール、全体の約76%が火災に遭っています。今回の暫定的な数字は、保護区内で約46万9,000ヘクタール、約79.8%です。
火災 | 保護区内の火災に遭った面積 | 保護区に占める割合 |
2023年 | 約44万7,000ヘクタール | 約76% |
今回・2026年 | 約46万9,000ヘクタール | 約79.8% |
今回初めて、保護区の大部分に及ぶ火災が起きたわけではなかったのです。
ただし、面積の割合が近くても、焼け方や生態系への影響、出火原因まで同じとは限りません。
また、2023年当時にも現地報道はあり、「誰も問題にしなかった」とまでは言えません。
それでも、「なぜ今回は、これほど大きな問題として受け止められているのか」という疑問は残ります。
報道や反応の差が実際にどれほどあるのかも含め、比較する価値があると思います。
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火災への怒りに、社会への不満が重なっているのではないか
私が考えたのは、今回の怒りには、火災そのものへの悲しみや憤りに加えて、社会への不満も重なっているのではないか、ということです。
モンゴルの人たちと接していると、政治や汚職、生活格差への不満を感じることがあります。
2025年には、首相の息子らの豪華な生活ぶりへの反発から抗議デモが続き、首相の退陣に至りました。
政治家やその周辺の暮らしに対する不信が、大きな政治問題につながった例です。
そうした背景の中で、有力企業の幹部らが関係する大規模火災が起きれば、自然への被害だけでなく、特別扱いや責任の取り方にも関心が向く可能性があります。
「立場のある人も、公平に責任を問われるのか」
「被害や消火費用を、国民が負担することになるのか」
こうした疑問に、以前からの不満が重なることは考えられます。
日本への反感だけで説明するより、社会への不信や不公平感が、今回の事件に集中しているのではないか。
これは世論調査で確かめた結論ではなく、現地で聞いた声と報道をもとにした、私自身の見立てです。
賠償を求める発言と、政治的な見せ方
報道によると、ノムトイバヤル副首相は、消火活動に納税者のお金が使われたことを挙げ、謝罪だけでは不十分で、関係者に賠償を求める必要があるとの考えを示しています。
確認できたのは、責任者を特定したうえでの賠償請求の検討であり、日本政府への賠償請求とは区別する必要があります。
責任が認められる関係者に、被害への対応を求めること自体は理解できます。
一方で、外国企業への強い姿勢が、国内の政治や行政への不満を、外へ向ける働きをしていないかという点も気になります。
ただし、政府や副首相が、その目的で動いているという証拠は確認できていません。不満が外へ向かう結果になることと、政治家が意図的にそう仕向けていることは、別の話です。
その点は分けながら、今後の説明や対応を見ていきたいと思っています。
3年前の火災から、何を学んだのか
過去にも同じ保護区で大規模火災があったと知ると、もう一つの疑問が生まれます。
2023年の火災を受けて、再発防止のために何が変わったのでしょうか。
今回の出火原因や関係者の責任に加え、乾燥期の車両移動、入域時の注意事項、初期消火、保護区の管理体制なども検証してほしいところです。
KDDIは、通信関連の業務で訪問し、当局の許可・管理のもとで移動していたと説明しています。これは会社側の説明ですが、責任の検証には、企業の行動と当局の対応を両方確認する必要があります。
過去の火災を持ち出すのは、今回の責任を軽くするためではありません。
同じ場所で大きな被害を繰り返さないために、以前の教訓がどう生かされたのかを知りたいからです。
怒りを、次の被害を防ぐ力に
今回の火災に心を痛め、説明や責任ある対応を求める声は、重く受け止める必要があります。
同時に、企業や関係者への批判が、日本や日本人全体への批判に広がることは避けてほしいと思います。
私が聞いた「今回の騒がれ方は何かおかしい」という声も、被害を軽視する意見としてではなく、事件の扱われ方への疑問として受け止めています。
3年前にも、同じ保護区で大規模火災があった。
その事実を踏まえて、今回の責任、過去からの対策、そして社会への不満が事件の受け止め方にどう影響しているのかを考える。
怒りが集中するだけで終わらず、公平な責任の検証と、次の被害を防ぐ行動につながってほしいと思っています。
※本稿は2026年10月27日時点の公開情報と、筆者が現地の知人から聞いた話をもとにした考察です。社会的不満と今回の反応の関係については、筆者の見立てです。
協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE
静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/



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