モンゴルでガソリン泥棒――バイクのタンクに穴を開ける被害から考えた、燃料と食糧の備え

モンゴル ガソリン泥棒の投稿から考える燃料不足
モンゴルの知人から、バイクのタンクに穴を開けてガソリンを盗む投稿が送られてきました。
今回の「モンゴル ガソリン泥棒」の投稿は、燃料不足が人々の生活にまで影響していることを感じさせます。
写真には、黒いバイクのタンクに穴が開いた様子が写っています。
投稿には「バイクに乗る人は気をつけて」と注意が添えられ、コメント欄にも、近くの住宅地で同じようなことがあったという声がありました。
ガソリンを盗むだけでなく、タンクまで壊してしまう。
被害にあった人は、燃料を失うだけでなく、修理費や仕事への影響も受けます。
もちろん、SNSの投稿だけで被害がどれほど広がっているかまでは分かりません。
それでも、燃料不足が人々の不安や切実さにつながっていることは伝わってきます。
3〜5時間並んでも、給油できるとは限らない
私が前回モンゴルにいた時も、給油は簡単ではありませんでした。
タンクが空であることを確認して、1人20リットルまでと聞きました。給油所では3時間から5時間も待つことがあり、列に並んでいても、燃料がなくなればそこで終了。
給油所は閉店してしまいます。
ガソリンは、ただ車を走らせるためのものではありません。
車やバイクを使って働く人にとっては、収入を得るための道具です。燃料がなければ仕事に行けない。
商品を運べない。
商売も止まる。
「食事ができないのと同じくらい切実だ」という言葉には、そうした暮らしの重さが表れていると思います。
モンゴル政府も、燃料不足の影響を認めている
モンゴル政府は2026年10月、長い給油待ちや高値での販売が起き、燃料不足が家計や企業に支障を与えていると説明しました。
9月に輸入されたAI-92ガソリンは64,573トンで、通常の消費には足りる量だった一方、買いだめなどで需要が急増すると月75,000〜80,000トンに達するとのことです。
詳しくはモンゴル政府の発表にあります。
政府はロシアからの調達に加え、中国や韓国からも燃料を確保しようとしています。
ただし、契約した量がすべてすぐに届くとは限りません。
10月上旬にも、給油所によって販売状況に差があり、行列や品切れが続いていると現地報道で伝えられました。
モンゴルは燃料需要の大部分を輸入に頼り、ロシアが主要な供給元です。
ロシア側の製油所被害や供給制約がモンゴルにも波及したとReutersは報じています。
ロシアが政府間契約に基づいて供給を続けていても、供給元の事情が変われば、モンゴル国内の給油にも影響が出ます。
石炭資源は強み。でも、ガソリンの代わりにはならない
モンゴルは石炭を国内で産出でき、電力や暖房の多くを石炭火力で支えています。
これは大きな強みです。しかし、自動車やバイクを動かすガソリン・軽油は別の問題です。
国内に石炭があっても、輸送燃料が不足すれば、仕事や物流は止まってしまいます。
エネルギー規制委員会によると、2024年のモンゴルの電力消費は国内発電で約75%をまかない、残り約25%を輸入していました。
資源国であっても、すべてのエネルギーを国内だけでまかなえているわけではありません。エネルギー規制委員会の資料で確認できます。
日本も他人事ではない
日本でも、太陽光発電所のケーブルや銅などを狙う金属盗が問題になっています。
警察庁によると、金属盗の認知件数は2024年に20,701件となり、前年から27.2%増えました。
また、2025年の窃盗犯全体は前年比2.5%増、自動車盗は5.0%増、オートバイ盗は25.0%増、侵入窃盗は9.8%増でした。
すべての盗難が増えているという意味ではありませんが、身近な窃盗の一部が増えていることは確かです。
警察庁も金属盗対策法を整備し、盗品の流通や犯行用具への規制を進めています。
もし日本でもガソリンが手に入りにくくなったら、燃料をめぐる盗難がさらに増えるのではないか。
私は、モンゴル以上に増える可能性さえあるように感じます。
ただし、これは私の懸念であり、燃料不足と盗難増加の関係を示す統計があるわけではありません。
国ごとの状況も違うため、どちらが多くなるか断定はできません。
それでも、銅やケーブルの盗難がすでに問題になっている今、燃料不足を遠い国の出来事として片づけることはできないと思います。
自給率だけでなく、備蓄と流通も必要
この問題は、食糧にも当てはまります。
国内で作る力があっても、保管する場所がなければ長く持ちません。必要な時に加工し、運ぶ仕組みがなければ、食卓まで届きません。
何でも国内だけでまかなうのは、費用や気候、土地の条件を考えると現実的ではありません。
それでも、燃料・食糧・医薬品・肥料など、供給が止まると生活や産業への影響が大きいものは、国内生産、備蓄、輸入先の分散を組み合わせる必要があります。
備蓄は、問題をすべて解決するものではありません。しかし、輸入が止まった時に、別の調達先を探し、物流を立て直すための時間をつくります。
備蓄量だけでなく、どこに保管するか、誰に優先して配るか、使った分をどう補充するかまで決めておくことが大切です。
「安く買える」だけでは、国の安心は守れない
平時には、海外から安く買えることが効率的に見えます。
しかし、供給が途絶えた時に、国民の生活や仕事をどこまで維持できるかも考えておかなければなりません。
自給率を高めることは、すべてを自国で作ることではないと思います。
国内で作れるものは作り、難しいものは備蓄し、輸入先を分散する。
そして、必要な人に届ける流通網を保つ。そうした仕組みがあって初めて、資源の豊かさや海外との取引が、国民の暮らしを支える力になります。
バイクのタンクに穴を開けてガソリンを盗む投稿を見て、燃料不足は数字だけの話ではないと感じました。食糧もエネルギーも「買える時に買う」だけでは足りない。
自国にない重要なものほど、平時から備えておく。
その当たり前の準備が、いざという時に仕事と暮らしを守るのではないでしょうか。
参考資料
参考資料
協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE
静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/



コメント