欧州自動車産業で少なくとも17万人削減へ――AI・ロボットはリストラを可能にする「加速装置」
更新日:9月4日


欧州の自動車メーカーと部品会社では、2024年以降に公表された計画だけでも、少なくとも約17万人規模の人員削減が進もうとしています。
ただし、この約17万人は「すでに解雇された人数」ではありません。今後数年間に実施される自然減、早期退職、希望退職、契約終了、採用抑制などを含む削減予定数です。
欧州自動車メーカーの主な削減計画
企業 | 削減規模 | 主な地域・期限 |
フォルクスワーゲン | 約3万5,000人 | ドイツ、2030年まで |
アウディ | 約7,500人 | ドイツ、2029年まで |
ポルシェ | 約9,000人 | ドイツ、2035年まで |
BMW | 最大約8,000人 | ドイツ、2027年まで |
フォード | 約4,000人 | 欧州・英国、2027年まで |
ステランティス | 少なくとも約2,500人 | イタリアで2024年に合意 |
確認できる主な合計 | 約6万6,000人 |
フォルクスワーゲンでは、約3万5,000人の削減がすでに労使合意されています。さらに削減規模を合計5万人程度へ拡大する案も報じられていますが、確定していないため、上の合計には含めていません。
また、メルセデス・ベンツも希望退職や人件費削減を進めています。
しかし、欧州全体の確定人数が公表されていないため、今回の合計には含めていません。
部品メーカーでは2年間で10万人を突破
欧州自動車部品工業会CLEPAによると、部品メーカーが発表した削減計画は次のとおりです。
発表年 | 削減予定数 |
2024年 | 約5万4,000人 |
2025年 | 約5万人 |
2年間合計 | 約10万4,000人 |
これは2年間で平均すると、
1日当たり約142人分の削減計画が公表された計算
になります。
ボッシュだけでも自動車部門を中心に約1万3,000人、ZFとコンチネンタルでも、合計2万人を超える規模の削減が進められています。
合計すると少なくとも約17万人
分野 | 公表された主な削減計画 |
自動車メーカー | 約6万6,000人 |
部品メーカー | 約10万4,000人 |
合計 | 約17万人 |
しかも、この約17万人には、次の影響が十分に含まれていません。
メルセデス・ベンツの希望退職
小規模部品メーカーの倒産や工場閉鎖
派遣社員や期間従業員の契約終了
販売店、物流会社、整備会社への波及
フォルクスワーゲンが検討している追加削減
工場の一時休業や労働時間の短縮
退職者を補充しないことによる自然減
したがって、欧州自動車産業全体に及ぶ実際の雇用への影響は、17万人より大きくなる可能性があります。
AI・ロボットはリストラの「直接原因」なのか
もちろん現在の人員削減の直接的な引き金は、AIやロボットだけではありません。
主な原因として考えられるのは、中国メーカーのEVが売れ、欧州メーカーの中国販売が低迷した、欧州の高い人件費
やエネルギーコスト、EV需要の読み違い、そしてエンジン車とEVへの二重投資です。
しかし、その背後ではAIとロボットによる省人化も進んでいます。
既存メーカーのEV転換が難しい
テスラや中国の新興メーカーは、最初からEVを前提に会社・工場・ソフトウェア・販売方法を設計できます。
一方、ベンツ・VW・BMWなどは、次のものを抱えたままEVへ移行しなければなりません。
エンジン・変速機工場
多数の部品メーカー
エンジン技術者と既存従業員
世界中の販売店と整備網
ガソリン車向けの開発設備
過去の車台・エンジンへの投資
それを維持しながら、新たにバッテリー工場、EV専用車台、モーター、半導体、充電システム、車載ソフトへ投資しています。
AIとロボットは、リストラを起こす唯一の原因というよりも、
AIは少ない人数でも会社を運営し、生産を続けられるようにする「削減の加速装置」
と考えると分かりやすいと思います。
ドイツのifo研究所によると、ドイツ企業の27.1%が、今後5年間にAIによって雇用が減少すると予想しています。
工場だけでなく、事務・設計・管理部門も減っていく
AI・ロボット化の影響を受けるのは、工場の組立作業員だけではありません。
今後は、一般事務、経理、購買、営業支援、設計補助、品質管理、生産計画、在庫管理、物流管理、コールセンターなどでも省人化が進む可能性があります。
例えば、これまで10人で担当していた仕事を、AIを使って5人で処理できるようになれば、企業は退職者を補充する必要がなくなります。
つまり、AI時代の人員削減は、必ずしも突然の大量解雇として現れるとは限りません。
退職者を補充しない
新卒採用を減らす
派遣社員の契約を更新しない
部門を統合する
希望退職を募集する
一人がAIを使って複数人分の仕事を行う
このような形で、少しずつ雇用者数が減っていく可能性があります。
欧州のリストラは、これからが本番かもしれない
現在進んでいる欧州自動車産業の人員削減は、販売不振やEV転換の失敗だけで起きているわけではありません。
需要の減少によって人員削減が始まり、その後をEVの部品点数削減、AIによる業務効率化、ロボットによる自動生産が後押ししています。
言い換えると、
販売不振がリストラの引き金を引き、AIとロボットが、人を減らしても経営を続けられる会社をつくっている。
これが、欧州自動車産業で現在起きている構造変化の本質ではないでしょうか。
今後、自動車そのものが「移動するロボット」へ変わるほど、その車を開発・製造する自動車会社も、AIとロボットを中心とした、より少人数の組織へ変わっていくと考えられます。
協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE
静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/



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