「モンゴルはインフレに悩み、日本は低成長に悩む──「成長国と低成長に悩む、正反対の経済問題」
- 後藤 友亮

- 8月14日
- 読了時間: 4分
更新日:5 日前

日本とモンゴルで実際に生活してみると、同じ「国民生活の苦しさ」でも、その原因がまったく違うことに気づきます。
現在のモンゴルではインフレが大きな問題です。食料品や外食、輸入品、日用品などを見ると、決して「物価の安い国」とは言えません。私自身の生活実感でも、電気・暖房・住宅・車など一部の固定費を除けば、日本より高いと感じるものもばかりです。
ただし、ここで重要なのは、インフレそのものはモンゴルだけに起きている特殊な問題ではないということです。
世界的にエネルギー、食料、人件費、物流費などは上昇しています。ある程度のインフレが存在すること自体は世界では珍しくなく、むしろ長期間、物価も賃金もほとんど上がらなかった日本の方が特殊だったとも考えられます。
そしてもう一つ重要なのが、インフレは経済が急成長する国で必ず起きる問題でもあるということです。
経済が成長すると所得や投資が増え、消費も拡大します。不動産価格や賃金も上昇します。
そこへモンゴルの場合は、鉱物資源からの収入、政府支出、海外からの資金なども入ってきます。
すると、
高成長 → 所得・投資の増加 → 消費拡大 → 不動産・物価上昇 → インフレ → 利上げ
という流れが起こりやすくなります。
特に経済の規模がまだ小さく、輸入への依存度が高い国では、急激に需要が増えても住宅、物流、商品、人材などの供給がすぐには追いつきません。
そのため、成長の勢いそのものがインフレを生み出すことがあります。
もちろんインフレを放置してよいという意味ではありません。
物価上昇が賃金上昇を大きく上回れば、一般家庭の生活は苦しくなります。そこで中央銀行が金利を上げれば、今度は住宅ローンや企業融資が高くなり、中小企業や投資にもブレーキがかかります。
つまりモンゴルが直面しているのは、
「成長を止めずに、どうインフレを抑えるのか」
という成長国特有の難しい問題でもあります。
一方、日本はかなり違います。
日本は長期間にわたり低成長・低インフレを経験してきました。賃金や消費が伸びず、経済そのものがなかなか大きくならない一方、高齢化による社会保障費や財政負担は増え続けました。
その結果、税、社会保険、住宅、自動車、エネルギーなど、生活するために継続的に必要となる固定的な負担が重くなっています。
つまり、
モンゴルは「成長した結果として生じる負担」に悩み、日本は「成長しなかった結果として積み上がった負担」に悩んでいる。
とも見ることができます。
ここが日本とモンゴルを比較して非常に面白いところです。
モンゴルには成長力があります。しかし、成長によって生まれるインフレをコントロールしなければならない。
日本には経済や社会の安定性があります。しかし、その安定を守るための負担が大きくなりすぎれば、さらに成長する力を失ってしまいます。
私はモンゴルのすべてが日本より優れているとは思いません。現在のインフレは間違いなく大きな問題です。
それでも、電気、暖房、住居、自動車など、**「生きていくために絶対必要な固定費そのものを小さくする」**という部分には、日本が参考にできるところがあると思っています。
逆にモンゴルは、日本を含む成熟国の経験から、インフレや資産価格の上昇を抑えながら、成長によって生まれた富を国民全体へどう還元していくのかを考える必要があります。
結局、どちらが正解という単純な話ではありません。
成長国はインフレに悩み、成熟国は低成長に悩む。
成長させればインフレの危険が生まれ、抑えすぎれば経済が停滞する。
日本とモンゴルは正反対に見えますが、最終的にはどちらも、
「国民の生活を守りながら、持続的に経済を成長させるにはどうすればいいのか」
という、世界中の国が抱える同じ難題を政治がどう対応するかだと思います。
「この記事を読んだ人におすすめ」→ 関連記事




コメント