アクトタワーは浜松をどう変えたのか――1,664億円(約10.7億ドル)の巨大事業、その30年後

浜松駅の近くで、ひときわ高くそびえている建物が「アクトタワー」です。
浜松市に暮らす私にとって、アクトタワーは観光施設というより、普段の街の風景の中にある身近な存在です。
しかし、改めて調べてみると、その高さや建築費、内部の施設など、浜松市民でも意外と知らない数字がいくつもありました。
この記事では、浜松を代表する建物「アクトタワー」と、周辺施設を含む「アクトシティ浜松」について、2026年9月16日現在の公式情報と、浜松市民としての私の記憶や感想を交えて紹介します。

アクトタワーは静岡県で最も高い超高層ビル
アクトタワーは、浜松駅に隣接するアクトシティ浜松の中心的な建物です。
主な建物概要は次のとおりです。
項目 | 内容 |
所在地 | 静岡県浜松市中央区板屋町111-2 |
高さ | 212.77m |
階数 | 地上45階 |
着工 | 1991年 |
完成 | 1994年 |
主な用途 | 商業施設・オフィス・ホテル・展望回廊 |
最上階 | 45階・展望回廊 |
展望回廊の高さ | 約185m |
高さ212.77mは静岡県内の建物として最も高く、完成から30年以上が経過した現在も、浜松の街並みを象徴する存在です。
東京や大阪、名古屋のように超高層ビルが並ぶ都市とは違い、浜松ではアクトタワーが単独で大きくそびえています。
そのため、実際の高さ以上に存在感を感じる建物です。

アクトタワーとアクトシティ浜松
「アクトタワー」と「アクトシティ浜松」は、厳密には同じものではありません。
アクトシティ浜松は、次の4つのゾーンで構成された大規模複合施設です。
Aゾーン:大ホール・中ホール・コングレスセンター
Bゾーン:アクトタワー・ホテル・オフィス・商業施設
Cゾーン:展示イベントホール
Dゾーン:浜松市楽器博物館・研修交流センター
つまり、アクトタワーはアクトシティ浜松を構成する建物の一つであり、Bゾーンに当たります。
建物の低層部には、飲食、物販、医療、サービス施設などが入る「アクトプラザ」、中層部にはオフィス、高層部には「オークラアクトシティホテル浜松」が入っています。
コンサート、国際会議、展示会、宿泊、食事、買い物などの機能を浜松駅前に集めた、当時としては非常に大規模な都市開発でした。
アクトシティ浜松の建築費は約1,664億円
アクトシティ浜松の公式情報によると、施設全体の建築費は約1,664億円です。
2026年9月16日現在の為替レート、1ドル=約155円で換算すると、約10.7億ドル(US$1.07 billion)になります。
内訳は次のとおりです。
区分 | 建築費 | ドル換算 |
浜松市の施設 | 約664億円 | 約4.3億ドル |
民間施設 | 約1,000億円 | 約6.4億ドル |
合計 | 約1,664億円 | 約10.7億ドル(US$1.07 billion) |
※ドル換算は、1ドル=約155円で計算した参考値です。
大・中ホール、コングレスセンター、展示イベントホール、楽器博物館、研修交流センター、アクトタワーなど、アクトシティ浜松全体を整備した建築費です。
それでも、1990年代前半に浜松でこれだけ大きなプロジェクトが実施されたことには驚かされます。
浜松の玄関口をつくり替える、まさに街を挙げた巨大事業だったことが分かります。

「音楽の街・浜松」を建物で表現
アクトタワーの外観は、見る方向によって楽器のハーモニカを思わせる形をしています。
浜松は、ヤマハ、河合楽器製作所、ローランドなど、世界的な楽器メーカーと深いつながりを持つ街です。
アクトタワーは単に高いだけではなく、「音楽の街・浜松」を建築で表現したランドマークともいえます。
また、「ACT」という名称にも意味があります。
A:ART、ACCORD
C:COMMUNICATION、CONVENTION、COMMUNITY
T:TECHNOLOGY、TOTAL MANAGEMENT
芸術、交流、国際会議、地域社会、先端技術など、当時の浜松が目指していた都市像が込められています。
45階の展望回廊から浜松を一望
アクトタワー最上階の45階、高さ約185mには展望回廊があります。
北側には浜松市街や南アルプスの山並み、南側には遠州灘が広がり、天候がよければ浜松の地形を広く見渡すことができます。
2026年9月現在の通常料金は、大人1,200円、小学生600円。営業時間は午前11時から午後6時までで、最終入場は午後5時30分です。
営業時間や入場制限は変更される場合があるため、訪問前にはオークラアクトシティホテル浜松の公式ページで確認することをおすすめします。
バブル崩壊期の巨大事業――当時は市民から反対もあった
アクトシティ浜松が着工した1991年は、日本のバブル経済が崩壊し始めた時期と重なります。
景気の先行きが急速に不透明になる中、これほど大きな施設を本当に建設する必要があるのか。
アクトシティ全体の建築費は約1,664億円。そのうち浜松市の施設には約664億円が投じられたことから、当時の浜松市民からは、かなり強い反対意見もありました。
私自身も、そのような声が多かったことを覚えています。
しかし、完成から30年以上が経過した現在の視点で振り返ると、製造業を中心とした強い産業基盤を持ち、比較的財政力のある浜松市にとって、アクトシティの建設は結果として正しい選択だったのではないかと私は感じています。
もちろん、巨額の建築費や、その後の維持管理費まで含めれば、すべてを手放しで評価することはできません。
それでもアクトタワーには、施設の収益や利用者数だけでは測れない大きな功績があります。

「浜松は力のある街だ」という印象を全国に与えた
私がアクトタワーの最も大きな功績だと感じているのは、浜松を都会に見せただけでなく、「浜松は力のある街だ」という印象を全国に与えたことです。
新幹線で浜松駅に到着すると、駅のすぐ目の前に高さ212.77mの巨大な超高層ビルが立っています。
他県から浜松を訪れた人から、
「浜松がこんなに都会だったとは知らなかった」
と言われることがあります。
街の第一印象は、人口や経済規模を示す数字だけで決まるものではありません。
駅を降りた瞬間に目に入る建物や街並みも、その都市の印象を大きく左右します。
浜松は、ヤマハ、スズキ、ホンダ、河合楽器製作所など、世界へ成長した企業を数多く生み出してきた産業都市です。
しかし、こうした産業やものづくりの力は工場や企業の中にあるため、浜松を訪れただけでは分かりにくい部分があります。
アクトタワーは、浜松が持つ経済力、企業の集積、ものづくりの力、そして街の将来に対する自信を、誰にでも分かる形で目に見えるものにしました。
これほど大規模な複合施設を浜松駅前に建設できたこと自体が、浜松の力を全国に示したのだと思います。
モンゴルのEco Tower Oneを見て、建物が持つ力を改めて感じた
私が建物の持つ力を改めて感じたのは、モンゴル・ウランバートルで建設中の「Eco Tower One」を実際に見たときでした。
Eco Tower Oneは、完成すれば高さ243m、地上55階となる計画です。
まだ建設中ですが、その巨大な姿を見るだけでも、ウランバートルが急速に発展し、次の時代へ進もうとしていることが伝わってきます。
一つの象徴的な建物が、その街だけでなく、国全体に対する印象まで変える可能性があります。
ウランバートルでEco Tower Oneを見たことで、私は改めて、アクトタワーも同じような役割を浜松で果たしてきたのではないかと感じました。
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建物の価値は完成直後の収支だけでは決まらない
アクトタワーは30年以上にわたって浜松の景観をつくり、全国から訪れる人に、
「浜松は想像していた以上に都会で、力のある街だ」
という印象を与え続けています。
建物の価値は、完成直後の収支だけで決まるものではありません。
長い時間をかけて街の象徴となり、その都市の知名度や印象、存在価値を高めることも重要な役割です。
浜松には、浜松城、浜名湖、中田島砂丘、航空自衛隊浜松広報館など、さまざまな名所があります。
その中でも、現代の浜松を視覚的に象徴する建物を一つ選ぶとすれば、やはりアクトタワーではないでしょうか。
アクトタワーは単なる超高層ビルではなく、浜松の産業力や都市としての力を全国へ伝えてきた建物だと私は感じています。
これからも浜松駅を訪れる人を迎え、浜松に暮らす人々の目印として、街の中心に立ち続ける建物だと思います。
※この記事は、2026年9月16日現在の公式情報と、筆者自身の記憶・体験をもとに作成しています。営業時間や入場料金などは変更される場合があります。
参考資料
協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC後藤友亮/GOTO YUSUKE静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル公式サイト:https://www.kakehasi.biz/




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