100歳、今も毎朝5時半に公園を掃除する――中国で捕虜となり、カラガンダ抑留を経験した男性の記憶

私は毎朝5時半から6時ごろにかけて、犬の散歩をしています。
最近の私の周りには、なぜか高齢の方が集まってきます。
そして皆さん、本当に親切です。
時には少しおせっかいと思うくらい、こちらのことを気にかけてくれます。
でも、今の私は、そんなおせっかいが嫌いではありません。
その中に、100歳になるおじいさんがいます。
この方は今でも毎朝5時半ごろになると公園へ来て、ほかの方々と一緒にゴミを拾ったり、掃除をしたりしています。
101歳とは思えないほど元気です。
先日、私がモンゴルから日本へ帰り、久しぶりにいつもの時間に犬の散歩へ行ったときのことです。
そのおじいさんが私を見つけると、後ろから私の背中をポンポンとたたき、とても嬉しそうに声をかけてくれました。
どうやら私がしばらく公園に姿を見せなかったので、
「どうしたのだろう」
と心配してくれていたようです。
近所の方から、私がモンゴルへ行っていたことを聞いたようでした。
そして「モンゴル」という言葉を聞いたとき、どこか懐かしそうな表情をしていました。
なぜだろう。
そう思いながら話を聞いていると、私は初めて、この方が若いころに経験した話を知ることになりました。
日本が戦争に負けたあと、中国で捕虜となり、その後、旧ソ連へ送られたそうです。
行き先は、現在のカザフスタンにある炭鉱の街、カラガンダ。
そこでカラガンダ で抑留され約2年間生活し、炭鉱で働いたそうです。
私は、
「つらかったでしょう」
と聞きました。
しかし、返ってきた言葉は、私が想像していたものとは少し違いました。
外はマイナス40℃ほどになることもあり、とても寒かったそうです。
ところが、
「炭鉱の中は暖かかったから、仕事そのものはそれほど苦ではなかった」
と言うのです。
私は少し驚きました。
私たちは戦争や抑留という言葉を聞くと、どうしても「すべてがつらかったのだろう」と考えてしまいます。
もちろん、実際には大変な生活だったと思います。
しかし、実際にその時代を生きた本人の記憶は、私たちが想像するものとは少し違うこともあるようです。
さらに印象に残ったのが、当時のロシア人についての話でした。
戦争に負け、捕虜となり、遠い土地へ送られた。
それだけを聞けば、ロシア人に対して悪い印象を持っていても不思議ではありません。
ところが、この方はそうではありませんでした。
「ロシア人の方が扱いとしては良かった」
と話していました。
誰と比べてそう感じたのかは、もう少し詳しく聞いてみたいと思っています。
そして食事についても聞きました。
本人の話では、炊いたご飯を茶碗に一杯。
そこへ白湯をかけて食べていたそうです。
おかずは一切なかった。
しかも、自分だけではなく、みんな同じだったそうです。
私は、
「それはかなりつらかったでしょう」
と思いました。
しかし本人は、
「それほど苦にはならなかった」
と話していました。
この言葉も、とても印象に残りました。
外はマイナス40℃。
炭鉱で働き、食事はご飯と白湯。
今の私たちの生活から考えれば、かなり厳しい環境です。
それでも、この方が昔の話をするとき、恨みや怒りを強く口にすることはありませんでした。
「炭鉱の中は暖かかった」
「ロシア人の方が扱いは良かった」
「食事も、それほど苦にはならなかった」
そんな言葉が出てきます。
私はその話を聞きながら、
「この人は、この101年間をどんな気持ちで生きてきたのだろう」
と思いました。
80年ほど前には、遠いカラガンダで炭鉱に入り、極寒の中で生活していた。
そして101歳になった今は、毎朝5時半に公園へ来て、地域のために掃除をしている。
そして、しばらく姿を見せなかった私のことまで心配してくれていた。
それを考えると、この方が歩いてきた人生そのものに、私はとても興味を持ちました。
次に会ったときには、もう少し詳しく聞いてみようと思っています。
中国のどこで捕虜になったのか。
カラガンダまでどうやって移動したのか。
炭鉱ではどんな仕事をしていたのか。
食事は一日何回だったのか。
なぜロシア人の方が良かったと感じたのか。
そして、なぜ100歳になった今でも、毎朝公園を掃除しているのか。
聞いてみたいことは、まだたくさんあります。
これは歴史の本で読んだ話ではありません。
毎朝、私が犬の散歩で会っている100歳のおじいさんが、自分の口で話してくれた記憶です。
そして、その100歳のおじいさんは今日もまた、朝早くから公園をきれいにしてくれています。
協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE
静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/





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