モンゴルとベトナムを比較――今のモンゴルは20年前のベトナムに似ている

今日、ベトナム人の友人経営者と電話で長く話しました。モンゴルとベトナムを比較すると、現在のモンゴルは20年ほど前のベトナムと、さまざまな点で似ていることが見えてきました。
最初は不動産の話でしたが、話が進むにつれて、現在のベトナムとモンゴルの違い、建設ラッシュ、税金、賃金、人手不足、中小企業の経営環境まで話題が広がりました。
私がモンゴルで実際に見て感じていることと、友人がベトナムで経験してきた変化を比べると、ひとつの共通点が見えてきました。
今のモンゴルは、20年ほど前のベトナムに似ているのではないか。
以前から何となく感じていましたが、今回の話で、その考えがさらに強くなりました。
約3年前に購入を検討したマンションが1億円近くに
私は約3年前、ベトナム人の友人から勧められたマンションの購入を検討し、実際に現地まで買い付けに行きました。
当時、私が聞いていた外国人向けの販売価格は約2,300万円でした。一方、ベトナム人向けの価格は約1,800万円だったと聞いています。
今回、友人から聞いた現在の価格は、1億円近くになっているというものでした。
約2,300万円から1億円なら、単純計算で約4.3倍です。ベトナム人向けとされた約1,800万円から考えれば、5倍以上になります。
もちろん、これは当時、友人から勧められた特定のマンションの事例です。
すべてのベトナム不動産が同じように上昇したわけではありません。場所、広さ、建物の品質、開発状況、購入条件などによって、価格は大きく異なります。
それでも、成長国の不動産価格が大きく動く過程を考えるうえで、非常に興味深い事例だと思います。
ベトナムで知った、日本の海外送金の現実
私は実際にマンションを購入するつもりで、ベトナムまで足を運びました。
しかし、日本からの海外送金がうまく進まず、残念ながら購入には至りませんでした。
後から聞いた話では、私と同じように、海外送金の問題によって購入できなかった日本人もいたそうです。
このとき私は初めて、海外に不動産を購入する意思と資金があっても、日本の銀行から自由に送金できるとは限らないという現実を知りました。
ただ、この頃はまだ、
「必要な書類を細かく揃えれば、最終的には送金できるだろう。自分で働いて得た自分のお金なのだから、いくら何でも送れないことはないだろう」
と、比較的軽く考えていました。
しかし、その後、モンゴルで法人を設立し、不動産を購入する過程で、日本から海外へまとまった資金を送ることの厳しさを、身をもって知ることになりました。
送金目的が明確で、正式な契約書があり、資金の出どころを説明できても、それだけで必ず送金できるわけではありません。
銀行によって対応や必要書類が異なり、送金相手、口座名義、実質的支配者、契約内容、資金の使い道など、細かな確認が行われます。必要な説明をしても、最終的には銀行側の判断で送金を断られることもあります。
物件を選び、売買条件が整っていても、最後に資金を送れなければ購入は成立しません。
ベトナムでマンションを購入できなかった経験は、日本の海外送金の難しさを知る最初のきっかけでした。
そしてモンゴル不動産の購入では、それが一時的な問題ではなく、海外投資を行う日本人にとって大きな壁になっていることを、改めて実感しました。
この経験から、海外不動産では物件選びと同じくらい、送金を受け付ける銀行、必要書類、送金先の名義、契約内容、送金目的などを、購入前に確認しておくことが重要だと学びました。
モンゴルとベトナムを比較して見えた共通点
外国人に市場を開けば、世界のお金が入ってくる
私が不動産価格を押し上げる大きな要因のひとつだと考えているのが、外国人に不動産市場を開放することです。
ベトナムでは、2015年に施行された住宅法により、一定の条件のもとで外国人による住宅所有が広く認められるようになりました。
私は約3年前に、外国人でもベトナムのマンションを購入できることを知り、現地へ買い付けに行きました。
外国人が購入できなければ、買い手は基本的に国内の人に限られます。
しかし、市場を外国人に開放すれば、世界中の投資家や移住希望者が購入者になります。
国内の所得水準だけで決まっていた不動産価格が、海外の所得や資金力とも比較されるようになるのです。
モンゴルでも、外国人が一定の条件のもとでマンションなどの建物を購入できます。ただし、ベトナムもモンゴルも土地には別の制限があるため、マンションの所有と土地の所有は分けて考える必要があります。
市場開放は海外資金を呼び込む一方で、不動産価格が現地の平均所得から離れ、一般の人が住宅を購入しにくくなる問題も生みます。
成長には、必ず良い面と難しい面の両方があります。
現在のベトナムは建設ラッシュ
友人が何度も話していたのが、現在のベトナムの建設ラッシュです。
住宅、工場、道路、商業施設など、さまざまな建設が続いているそうです。
ベトナムは製造業への海外投資が多く、政府もインフラ整備を進めています。
建設が増えれば、建設作業員だけでなく、運送、資材、設備、整備、飲食、住宅など、周辺産業にも仕事が生まれます。
友人は、この状態が続けば、近いうちに人手不足になるのではないかと話していました。
さらに、ベトナム国内の賃金や仕事が増えれば、現在海外で働いているベトナム人も、いずれ母国へ戻るようになるのではないかという話にもなりました。
日本で働くことが常に一番有利だとは限らない時代が、少しずつ近づいているのかもしれません。
成長とともに税金や制度も厳しくなる
友人によると、現在のベトナムでは、以前より税金の管理が厳しくなっているそうです。
路上で営業する小さな店まで、課税や申告の対象として把握されるようになってきたという話でした。
成長初期の国では、現金商売や小規模な露店など、行政が把握しきれない経済活動が多く存在します。
しかし、経済が発展し、電子決済や行政システムが整うと、それまで把握されていなかった商売にも税務管理が広がります。
国が発展する過程では、ある意味で自然な変化です。
しかし、負担が増えるのは大企業だけではありません。小さな商店、個人事業者、中小企業も同じです。
友人も、「以前より商売が難しくなり、中小企業の利益が減った」と話していました。
自動車の車検についても、関連費用を含めて約5万円かかると聞きました。平均賃金を考えれば、決して小さな負担ではありません。
ただし、車種、地域、税金、保険、整備費用などが含まれている可能性があるため、ベトナム全国一律の車検料金として判断することはできません。
経済が成長すると社会は便利になりますが、同時に税金、車検、保険、各種手続きなども増え、以前よりお金と規則に厳しい社会になります。
ベトナムの平均月給は思ったほど上がっていない
友人によると、現在のベトナムの平均月給は日本円で約10万円とのことでした。
統計上の平均賃金は、対象や地域によって差があります。全国平均では月額約820万ドン程度という資料もあり、日本円に換算すれば約5万円前後です。
一方、都市部、専門職、外資系企業などでは、それ以上の賃金を得ている人も多いため、友人が話していた月給約10万円という感覚も、都市部では不自然ではありません。
それでも、ベトナムの経済成長や不動産価格の上昇と比べると、一般の人の賃金は思ったほど上がっていないように感じます。
私は、その理由のひとつに、ベトナムドンの為替水準があると考えています。
仮にドンが円に対して3倍の価値になれば、同じドン建ての給料でも、日本円に換算した金額は3倍になります。
ただし、これは円換算額の話です。ベトナム国内の物価や雇用、輸出企業の競争力も変化するため、現地での実質賃金まで単純に3倍になるわけではありません。
ベトナムは輸出製造業によって成長してきました。
通貨が急激に高くなれば、海外から見た人件費も上昇し、輸出企業や外国企業にとっての価格競争力が低下します。
そのため、ベトナムは為替と物価を管理しながら、輸出、製造業、海外投資による成長を優先している面があるのではないかと私は推測しています。
平均給与だけでは分からない収入もある
統計上の給与だけでは、ベトナムの人たちの生活を説明できない部分もあるように感じます。
家族による商売、副業、不動産収入、現金収入、海外からの送金など、給与以外の収入を持つ人もいるのではないかと思います。
これはモンゴルでも同じです。
公表される平均給与だけを見ると、それほど高くありません。しかし、実際の生活や消費を見ると、給与以外の収入を得ている人も少なくないと感じます。
新興国の生活水準を、平均給与だけで判断しない方がよいと思います。
今のモンゴルは20年前のベトナムに似ている
現在のモンゴルには、ベトナムが急成長を始めた頃と似た部分があります。
若い人口が多い
地方から首都へ人口が集中する
建設ラッシュが始まっている
不動産価格が上昇している
海外から資金が入り始めている
自動車や住宅への需要が増えている
制度やインフラが後から追いかけている
もちろん、両国には大きな違いがあります。
ベトナムは人口1億人を超える製造業・輸出国です。一方、モンゴルは人口約350万人で、鉱物資源への依存が大きい内陸国です。
そのため、モンゴルがそのままベトナムと同じ道を進むとは限りません。
それでも、成長国が発展していく途中で起きる現象には、多くの共通点があります。
ベトナムの現在を見ることは、モンゴルがこれから経験する可能性のある変化を考える材料になります。
私にとって不動産の価値は「建物」より「環境」
私が不動産を見るとき、建物だけを見ているわけではありません。
不動産の価値を決めるのは、建物そのものよりも、その周囲にどのような環境があるかだと考えています。
私は、不動産はある意味で「テーマパーク」に似ていると思っています。
テーマパークの価値は、ひとつの建物だけで決まりません。
周囲の景観、交通、店舗、安全性、楽しさ、そこで過ごせる時間など、環境全体によって価値が生まれます。
ドバイを見ても、そのことがよく分かります。
道路、空港、高層ビル、商業施設、観光施設、人工島などをつくり、都市全体の環境価値を高めたことで、世界中から人とお金が集まりました。
しかし、モンゴルには人工的につくらなくても、最初から世界的に珍しい大自然があります。
広大な草原、山、湖、大きな空、星空、動物、遊牧文化。
これらは、ほかの国が巨額の資金を投じても簡単につくることができません。
私は、モンゴルの大自然そのものが、経済成長した国の都市インフラに匹敵する、場合によってはそれ以上の価値を持つ「自然インフラ」だと考えています。
モンゴルの気候は、大自然を守る維持装置
モンゴルの大自然には、もうひとつ大きな特徴があります。
それは、温暖で湿度の高い国と比べて、自然環境を維持するための手間が比較的少ないことです。
日本や東南アジアでは、草木が勢いよく成長します。
放置すれば雑草が伸び、木の枝が広がり、虫も増えます。高温多湿の環境では、物が腐りやすく、カビや臭いも発生しやすくなります。
自然が豊かな一方で、快適な環境を維持するには、草刈り、剪定、防虫、防腐、防カビなどの手入れが必要です。
モンゴルは寒冷で乾燥しています。
草が必要以上に伸びにくい
高温多湿な地域より虫が少ない
物が腐敗しにくい
カビや臭いが発生しにくい
広大な景観が比較的少ない管理で保たれやすい
モンゴルの人にとっては当たり前の環境かもしれません。
しかし、湿気、雑草、虫、カビ、腐敗に悩まされる国から来た人にとっては、大きな魅力です。
モンゴルの厳しい気候は、欠点であると同時に、大自然を維持する装置でもある。
もちろん、まったく自然管理が必要ないわけではありません。
モンゴルにも砂漠化、過放牧、ゾドと呼ばれる寒害、廃棄物などの問題があります。乾燥した土地は、一度傷つくと植物が回復するまで時間がかかる場合もあります。
それでも生活環境として見れば、草、虫、湿気、カビ、腐敗への対策が少なくて済むことは、海外の人にとって明確なメリットだと思います。
モンゴル政府に伝えたいほど評価している暖房政策
モンゴルで実際にマンションを購入し、日本とモンゴルの両方で生活しているからこそ分かったことがあります。
それは、モンゴルの暖房政策が、外国人から見ると極めて評価の高い政策だということです。
モンゴルの人にとって、冬の暖房は当たり前の生活基盤でしょう。
しかし、海外の人は母国の暖房費や光熱費と比較します。
世界でも有数の寒冷都市であるウランバートルでは、外が氷点下30度近くになっても、地域暖房に接続されたマンションなら室内を暖かく保つことができます。
しかも、物件によっては暖房費が月額数千円程度の管理費に含まれています。
私が購入したマンションも、管理費に暖房が含まれています。
日本で冬に広い部屋を一日中暖め続ければ、電気代や燃料代は相当な金額になります。
その日本と比較して初めて、モンゴルの暖房環境がどれほど価値のあるものかが分かりました。
モンゴル政府にとっては、国民生活を守るための暖房政策。外国人から見ると、移住や不動産購入を後押しする極めて価値の高い政策です。
この価値は、モンゴル国内にいるだけでは気づきにくいかもしれません。
暖房費を比較的低く抑えられれば、外国人も冬を含めた長期滞在を考えやすくなります。年間の生活費を予測しやすくなり、マンションも長期保有しやすくなります。
ただし、すべての住宅で暖房費が安いわけではありません。
地域暖房につながっていないゲル地区や一戸建てでは、石炭、電気、断熱設備などの負担があります。
外国人向けに最も価値を伝えやすいのは、地域暖房に接続された、断熱性能の高いウランバートルのマンションです。
モンゴルの売りは「寒くないこと」ではない
モンゴルの寒さを隠す必要はありません。
むしろ、次のように伝えた方が本当の価値が分かります。
モンゴルの売りは、寒くないことではありません。世界でも有数の寒さを、比較的安い費用で快適にしのげることです。
寒さが大自然を守り、資源と地域暖房が人の生活を守る。
この組み合わせは、世界的に見ても珍しいと思います。
道路、空港、高層ビルだけが、外国人を呼び込むインフラではありません。
厳しい冬でも安心して暖かく暮らせる仕組みも、モンゴルが世界へ誇れる生活インフラです。
人口約350万人は、見方を変えれば強みになる
モンゴルの人口は約350万人です。
人口の少なさは、国内市場や労働力、不動産を売却するときの流動性という面では弱点です。
しかし、自然環境という視点では、人口が少ないことは強みにもなります。
人口が増えすぎれば都市開発が広がり、モンゴルらしい草原や静かな環境が失われる可能性があります。
私は、ウランバートルは大都会として発展し、都市を離れれば広大な自然が残っているという形がよいと思っています。
ウランバートルは大都会。そこを離れれば、世界でも珍しい大自然が広がっている。
この両方が存在することに、モンゴルの本当の価値があります。
人口1億人の国になる必要はありません。
約350万人という人口規模だからこそ、大都市と大自然を同時に維持できる可能性があります。
ベトナムの現在から、モンゴルの未来を考える
20年前のベトナムは、現在より不動産や物価が安く、税金や制度も緩やかだったのだと思います。
しかし、経済が成長し、不動産価格が上がり、行政制度が整備されると、社会は便利になる一方で、以前よりお金と規則に厳しくなります。
不動産価格が上がる
税務管理が厳しくなる
車や住宅の維持費が増える
人件費や材料費が上がる
中小企業の利益が圧迫される
資産を持つ人と持たない人の差が広がる
成長すれば、国民全員が同じように豊かになるわけではありません。
ベトナムの現在を見ることは、モンゴルがこれから経験する可能性のある変化を考えるうえで、大きな参考になります。
しかし、モンゴルにはベトナムとは違う、独自の価値があります。
世界的に珍しい大自然、それを維持する寒冷で乾燥した気候、資源国としての強み、そして厳しい冬の生活を支える地域暖房です。
今回、ベトナム人の友人経営者と長く話したことで、モンゴルの現在地と、モンゴルにしかない可能性が、以前よりはっきり見えた気がしました。
今のモンゴルは、20年前のベトナムに似ている。しかし、モンゴルはベトナムと同じ国になる必要はありません。
大都市として発展するウランバートルと、その外側に残る広大な大自然。
この両方を守りながら世界に市場を開くことができれば、モンゴルはほかの成長国とは違う、非常に魅力のある国になれると私は感じています。
協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE
静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/





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