EV一本化を急がなかったトヨタ――慎重なマルチパスウェイ戦略は正しかった
更新日:9月4日


欧州メーカーは「エンジンとEVへの二重投資」トヨタは「市場に応じて5つの選択肢」問題はEVではなく、需要より先行しすぎたこと 欧州の自動車メーカーが苦境に立たされています。
ドイツでは、自動車産業の雇用者数がわずか1年間で4万2,300人も減少しました。
その背景には、中国メーカーとの競争、販売不振、高い人件費やエネルギーコスト、EV転換への巨額投資、があると考えられます。
私は当初、欧州ではすでにEVが主流になっていると思っていました。しかし、実際の新車販売を調べてみると、少し違う姿が見えてきました。


2026年上半期の新車販売では、EVのみの割合は欧州で22.2%、米国で7.1%、中国でも33.2%です。
フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナムの東南アジア主要4か国では、推計約24%となっています。


PHVを含めると電動化は確かに進んでいます。
しかし、PHVにはエンジンも搭載されています。通常のハイブリッドも、基本的にはガソリンを使い、エンジンを主体として走る車です。
この考え方で分類すると、エンジンを搭載している新車は、欧州で75.7%、米国で92.9%、中国でも66.8%を占めています。
つまり、世界の自動車市場はEVへ向かっているものの、現時点では、まだ完全にEVへ切り替わったわけではありません。
それにもかかわらず、欧州メーカーは既存のエンジン事業を維持しながら、EV工場、バッテリー、ソフトウェアにも巨額の投資を行いました。
二つの自動車会社を同時に経営するような重い負担を抱えた一方で、EV需要は想定したほど速く伸びませんでした。
問題はEVそのものではなく、需要より先にEV一本化を急ぎすぎたことではないでしょうか。
一方、トヨタはガソリン車、ハイブリッド、PHV、EV、水素という複数の道を残しました。国や地域によって、所得、電力事情、充電設備、走行距離、環境が大きく異なるからです。
EVが売れる地域ではEVを、充電設備が不足する地域ではハイブリッドを、長距離と電気走行を両立したい人にはPHVを提供する。
これがトヨタの「マルチパスウェイ戦略」です。
2026年現在までの世界市場を見る限り、トヨタがEV一本に絞らず、複数の選択肢を残した慎重な判断は正しかったと私は思います。
ただし、これから先も同じとは限りません。
AIとロボット技術が急速に発達すれば、車そのものが「移動するロボット」へ変わっていきます。ロボットを動かす仕組みとして考えれば、複雑なエンジンより、電子制御しやすいモーターの方が相性はよいでしょう。
これまでは、トヨタの慎重な判断が正しかった。しかし、AI・ロボット時代の加速によって、これからEVの普及速度が急に変わる可能性があります。
だからこそ、トヨタにとってもマルチパスウェイは最終的な答えではなく、EVとAI・ロボットの時代へ移るまでの、非常に合理的な橋渡し戦略なのかもしれません。
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