日銀は利上げを先延ばししすぎた|政策金利3%も現実味

日銀が利上げを先延ばしした代償
私は早い段階から、日銀は実際の利上げ幅だけでなく、「必要であれば今後も継続して利上げする」という本気度を市場に示す必要があると指摘してきました。
しかし、これまでの対応を振り返ると、単に判断が遅れたというより、何らかの事情によって意図的に利上げを先送りしてきたようにも感じます。
もちろん、私にはその本当の理由は分かりません。
景気の悪化、住宅ローンへの影響、企業の資金繰り、国債の利払い負担、政治的な事情など、さまざまな要因があったことは想像できます。
ただ、どのような事情があったとしても、結果として市場には「日銀は簡単に金利を上げられない」と見透かされてしまいました。
早い段階で本気度を示していれば、市場は将来の利上げを警戒し、実際の利上げ幅はもっと小さくて済んだ可能性があります。
金融市場は、実際に金利が上がってから動くとは限りません。中央銀行が今後どのような政策を取るのかを予測し、先回りして動きます。
早い段階で日銀が本気度を示していれば、市場はさらなる金利上昇を警戒し、過度な円売りや低金利を前提とした借入も抑えられた可能性があります。
しかし、利上げを慎重に進めてきた結果、いまとなっては「ほら、見たことか」と言いたくなるような状況になってきました。
政策金利を1.25%まで上げても円安が止まらず、このままでは2%、場合によっては3%程度まで上げなければ、市場へ本気度が伝わらない可能性も出てきています。
日銀は政策金利を1.25%へ引き上げ
日銀は2026年9月18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げました。
政策金利1.25%は31年ぶりの高い水準です。決定は7対2で、2人の委員が利上げに反対しました。
ところが、利上げ後も円は買われず、一時1ドル=158円台まで下落しました。
市場は今回の0.25%利上げよりも、日銀内部に反対意見があり、今後も継続して利上げできるのか分からないことを重視したようです。
つまり、実際に政策金利を上げても、市場から「日銀の本気度はまだ十分ではない」と受け止められた可能性があります。
早い段階で本気度を示していれば、市場は警戒した
私は早い段階から、ここを指摘してきました。
日銀が円安や物価高の初期段階から、「円安と物価上昇が続けば、今後も金利を引き上げる」という姿勢を明確にしていれば、市場参加者はさらなる利上げを警戒したはずです。
市場に警戒感が生まれれば、円を売って金利の高い海外通貨を買う動きや、低金利が永遠に続くことを前提とした過剰な借入も、ある程度抑えられます。
実際に政策金利を大幅に引き上げなくても、市場に「日銀は本気で円安と物価高を抑える」という認識を持たせることができれば、政策には先回りした効果が生まれます。
しかし日銀は、利上げを行っても、その後に慎重な発言を繰り返してきました。
そのため市場には、「日銀は景気や住宅ローン、企業融資、国債への影響を恐れ、これ以上は簡単に金利を上げられない」という見方が残りました。
今回、政策金利を1.25%へ引き上げても円安が進んだことは、私が早い段階から懸念していた状況が、現実になりつつあることを示しています。
いまとなっては、姿勢を示すだけでは市場が反応せず、実際に大きな利上げをしなければ本気度が伝わらない段階へ近づいているのではないでしょうか。
利上げを先延ばしした代償
低金利は、住宅ローンを利用する人や、借入金の多い企業にとっては助かります。
しかし、低金利を長期間続ければ、円を保有する魅力が低下し、より金利の高い海外へ資金が流れやすくなります。
その結果として円安が進むと、原油、天然ガス、食料、原材料などの輸入価格が上昇します。
利上げを避けることで借り手を守った一方、円の価値が下がり、国民全体が物価高という形で負担することになったとも考えられます。
さらに、物価上昇が一時的なものではなく、企業や消費者の意識に定着してしまうと、それを抑えるために必要な金利も高くなります。
本来なら早い時期から0.25%ずつ時間をかけて金利を正常化し、企業や家庭に準備する時間を与えるべきでした。
先延ばししたことで問題がなくなったのではなく、後ろへ送った分だけ、これから必要になる調整が大きくなったのです。
約3年間で借入金利が17倍になった事例も
TBSの報道では、企業の借入金利が約3年間で17倍になった事例が紹介されています。
もともとの金利が極端に低かったため、倍率が大きく見える面はあります。それでも、短期間で企業の資金調達環境が大きく変化していることは確かです。
低金利が永遠に続くことを前提として借入を増やしてきた企業ほど、今後の影響は大きくなります。
住宅ローンでも、変動金利を利用している家庭は、返済負担の増加を避けられません。
早い段階から緩やかに利上げしていれば、企業や家庭にも、借入額を減らしたり、固定金利へ切り替えたりする時間がありました。
政策金利3%も考える必要が出てきた
現在の政策金利は1.25%ですが、物価上昇率が2%前後であれば、物価を考慮した実質金利はまだマイナスです。
単純に計算すると、
政策金利1.25%-物価上昇率2%=実質金利マイナス0.75%
となります。
政策金利を1.25%まで引き上げても、実質的にはまだ金融緩和が続いている状態です。
今後も円安や原油高が続き、物価上昇率が2~3%で定着するなら、政策金利を2%、場合によっては3%程度まで引き上げなければ、物価と円安を十分に抑えられない可能性があります。
数年前まで、日本の政策金利が3%になることは、ほとんど想像されていませんでした。
しかし現在では、3%は単なる空想ではなく、条件次第で起こり得るリスクとして考えておく必要があります。
3%は現時点の基本シナリオではない
ただし、直ちに政策金利を3%まで引き上げる必要があると断定することはできません。
現在の市場予想では、日銀の最終的な政策金利は1.5~2%程度、中心は1.75%前後とみられています。
一気に3%まで引き上げれば、次のような副作用が予想されます。
中小企業の資金繰り悪化
住宅ローン返済額の増加
不動産価格の下落
設備投資と個人消費の減少
金利上昇に耐えられない企業の倒産
国債の利払い負担増加
景気後退
日本は長期間にわたって低金利に依存してきたため、金利上昇への耐性が低くなっています。
だからこそ、もっと早い時期から、少しずつ金利を正常化する必要があったのです。
どのような場合に3%が現実になるのか
政策金利3%が現実味を持つのは、次の条件が重なった場合だと考えます。
円相場が再び1ドル=160円を超える
原油や天然ガス価格が高止まりする
物価上昇率が3%前後で定着する
政府が積極財政をさらに拡大する
国債への信頼が低下する
米国との金利差が縮まらない
日銀が利上げしても円安が止まらない
特に深刻なのは、利上げしても円が買われなくなることです。
今回、政策金利を1.25%へ引き上げたにもかかわらず円安が進んだことは、市場が日銀の利上げの継続性を疑っている表れとも考えられます。
今後も慎重な姿勢を続ければ、円安を止めるために、後から一段と強い政策を求められる可能性があります。
問題は「利上げするか」から「どこまで上げるか」へ
いまや問題は、利上げするか、しないかではありません。
どの程度の速度で、どこまで利上げするのかという段階に入っています。
ゆっくり上げれば、円安と物価高が再び進む可能性があります。
急いで上げれば、住宅ローン、企業融資、不動産、国債市場に大きな負担がかかります。
日銀は非常に難しい状況に追い込まれていますが、その原因の一つは、金利正常化と市場への意思表示を長期間先延ばししてきたことにあると思います。
まとめ
私は早い段階から、日銀は利上げ幅だけでなく、本気度を市場に示す必要があると指摘してきました。
早く本気度を示していれば、市場は将来の利上げを警戒し、過度な円売りや低金利を前提とした借入も抑えられた可能性があります。
その段階なら、政策金利を大幅に上げなくても、一定の効果が得られたかもしれません。
しかし、政策対応を先延ばしした結果、1.25%まで利上げしても円安が進み、市場に本気度が伝わりにくくなっています。
現時点では1.5~2%程度が市場の基本的な予想ですが、円安、物価高、原油高、積極財政が重なれば、政策金利3%も現実的なリスクになります。
正直なところ、「だから早い段階で、本気度を示しておくべきだった」と思わずにはいられません。
利上げを先延ばししたことで負担が消えたのではなく、問題を後ろへ送り、その分だけ将来の調整を大きくしてしまったのではないでしょうか。
2026年9月20日現在
協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE
静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/





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