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日本人が気づいていない「見えない資産没収」──給料も預金残高も同じでも、買えるものが減っていく

7月20日
読了時間: 7分

更新日:8月26日



暴落なら、誰でも危機感を持ちます。

株価が半分になった。預金が減った。会社が倒産した。

こうした変化なら、誰にでも「資産を失った」と分かります。

しかし今、日本で起きていることは、もっと厄介です。

一瞬で奪われるのではありません。

数年かけて、静かに価値が削られていく。

預金残高は同じ。給料の額面も同じ。

それなのに、そのお金で買えるものは少しずつ減っている。

私はこれを、比喩的に言えば、

「見えない資産没収」

のようなものだと感じています。

そして、よく考えてみると削られているのは、預金だけではありません。

私たちが働いて受け取る「労働の対価」そのものも、同時に目減りしているのです。


預金が減らなくても、価値は減る

海外の銀行金利や投資商品の利回りを見て、15〜20%などという数字を聞けば、日本人の多くはまず、

「怪しい」「そんな利回りはおかしい」「ポンジスキームではないか」

と疑うでしょう。

たしかに、日本円がまだ強く、物価も安定し、預金しているだけでも購買力が大きく失われにくかった時代なら、その感覚にも合理性がありました。

しかし、今の日本はもう、あの頃とは違います。

日本の政策金利は依然として低い水準にある一方、物価は上昇しています。

預金金利より物価上昇率の方が高ければ、銀行口座にある数字は減っていなくても、そのお金で買える商品の量は減っていきます。

つまり、

名目上の資産は同じでも、実質的な資産価値は減っている。

ということです。

1,000万円の預金が10年後も1,000万円だったとしても、物価が大きく上がれば、その1,000万円で買える住宅、車、食品、サービスの量は少なくなります。

残高だけを見れば何も失っていない。

しかし購買力で考えれば、確実に資産は削られています。


円安は、日本人の「世界での購買力」も削る

さらに問題なのは、国内の物価上昇だけではありません。

円そのものの価値も、海外通貨に対して大きく低下しています。

たとえばスイスフランに対して見ても、数年前と比べて円の価値は大きく下がりました。

ドルに対しても同じです。

これは単なる為替チャートの話ではありません。

円安とは、

日本人の給料や預金を、世界基準で見たときの価値が下がること

でもあります。

以前なら1,000万円で買えた海外不動産、海外サービス、輸入品、海外旅行などが、今では同じ1,000万円では買えなくなっている。

日本国内だけで暮らしていると分かりにくいですが、海外へ出ると円の購買力低下をかなり強く感じます。


そして、労働の対価まで削られている

ここが、さらに重要なところです。

物価が上がり、円の価値が下がるということは、

すでに持っている資産だけでなく、これから働いて受け取る給料の価値も下がっている

ということです。

たとえば月給30万円の人がいたとします。

給料が30万円から変わらなかったとしても、生活に必要な商品やサービスが10%、20%と値上がりすれば、その30万円で買えるものは少なくなります。

つまり、数字としての給料は同じでも、

実質的な労働対価は減っています。

以前なら1時間働けば買えたものが、今は1時間半働かなければ買えない。

これを別の角度から見れば、

同じ時間を働いているのに、受け取っている価値が少なくなっている

ということです。

だから私は、今起きていることは単なる「見えない資産没収」だけではないと思います。

同時に、

「見えない労働対価の目減り」

も進んでいるのです。

働いても、貯めても、両方から削られる

これは非常に厳しい構造です。

働いて30万円を得る。

しかし、その30万円の購買力は以前より低い。

それでも節約して5万円を貯金する。

ところが、その貯めた5万円もインフレや円安によって実質的な価値が減っていく。

つまり、

働いて得る段階でも価値が削られ、貯めた後にも価値が削られる。

という二重構造です。

これでは、真面目に働き、節約し、貯金してきた人ほど、

「こんなに頑張っているのに、なぜ豊かにならないのか」

と感じるのは当然です。


日本は金利を簡単に上げられない

では、金利を上げればいいのか。

話はそれほど簡単ではありません。

金利を上げれば、円安を抑えたり、インフレを冷やしたりする方向には働きます。

しかし一方で、

住宅ローン、企業の借入、不動産価格、株価、国債の利払い、景気、

などに大きな負担がかかります。

日本は長い間、超低金利を前提に経済や財政の仕組みを作ってきました。

そのため、急激な金利正常化には大きな痛みを伴います。

しかし、金利を上げなければ円安が続きやすく、輸入物価は上がり、生活コストが上昇し、預金や給料の実質価値がさらに削られる可能性があります。

つまり今の日本は、

「金利を上げれば痛い。上げなくても痛い」

という、非常に難しい構造に入りつつあります。


一番怖いのは、ゆっくり進むこと

この問題の怖さは、一気に起こらないことです。

明日、預金が半分になるわけではありません。

来月、給料が突然半分になるわけでもありません。

だから、多くの人は危機として認識しません。

しかし、

去年より食品が高い。数年前より電気代が高い。車も住宅も高い。海外旅行も高い。輸入品も高い。

それが何年も積み重なる。

そしてある日振り返ると、

「同じ100万円なのに、昔の100万円とは全く違う」

という状態になっています。

暴落なら誰でも逃げようとします。

しかし、ゆっくり価値を奪われると、人は慣れてしまいます。

これこそが、私が最も怖いと思うところです。


「何円持っているか」より「何が買えるか」

これからは、資産を見るときにも、

「預金が何万円あるか」

だけでは足りないと思います。

本当に見るべきなのは、

そのお金で何が買えるのか。

そして給料についても、

「月収が何万円か」

ではなく、

その給料で、どれだけ生活できるのか。

を見る必要があります。

お金とは、本来数字ではありません。

交換できる価値です。

1,000万円という数字が同じでも、買えるものが半分になれば、実質的には半分に近い価値しかありません。

月給30万円という数字が同じでも、生活費が大きく上がれば、その30万円の労働対価としての価値も低下しています。


通貨をどこに置くかで差が生まれる時代

もし円安・物価上昇・低金利という状態が長く続けば、日本人の資産格差は別の形でも広がっていく可能性があります。

日本円だけを持っている人。

外貨を持っている人。

海外資産を持っている人。

不動産や金などの現物資産を持っている人。

それぞれが、同じインフレや円安から受ける影響は違います。

だからこれからは、

「いくら貯めるか」だけではなく、「何で持つか」

も重要になっていくと思います。

もちろん、海外資産や外貨なら必ず安全という話ではありません。

為替も相場も変動します。

ただ、資産のすべてを一つの通貨だけに依存することにもリスクがある。

そういう時代に入ったのだと思います。


日本人が本当に失っているもの

今、日本人が静かに失っているのは、単なる預金価値だけではないのかもしれません。

貯めたお金の価値。

働いて得る給料の価値。

世界で物を買える購買力。

この3つが同時に削られているとすれば、問題はかなり深刻です。

預金残高は変わらない。

給料の数字も変わらない。

しかし暮らしは苦しくなる。

だからこそ、何が起きているのか分かりにくい。


私はこれこそが、

日本人が気づきにくい「見えない資産没収」と「見えない労働対価の目減り」

だと思います。

一気に奪われるのではありません。

数年かけて、静かに。

給料も、預金も、購買力も。

気づいたときには、数字は同じなのに、その中身だけがまったく別物になっている。

これが今の日本で起きている、最も気づきにくい変化の一つなのではないでしょうか。

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