「税金は上がっただけではない──この10年で個人と中小企業まで広がった『取り漏らさない仕組み』」
- 後藤 友亮

- 8月13日
- 読了時間: 3分

私が実際に35年あまり会社を経営し、何回も税務調査を経験してきた中で感じることがあります。
税率そのものが上がったこと以上に、税金を「取り漏らさない仕組み」が、この10年ほどで急速に強くなったのではないかということです。
税務調査だけではありません。
銀行口座、電子申告、マイナンバー、インボイス、海外資産や海外送金、電子取引など、以前なら把握しにくかったお金の流れまで、行政がデータとして把握できる時代になりました。
実際、国税庁もAIやビッグデータを利用し、申告漏れの可能性が高い納税者を抽出したり、徴収を効率化したりする方向を明確にしています。
つまり、「税務調査が怖くなった」というより、
国の税金を捕捉する能力そのものが、昔とは比較にならないほど高くなった
と考える方が正確なのかもしれません。
そして興味深いのが、この変化が進んだ時期です。
2010年代には日本株が大きく上昇し、外国人投資家の存在感も高まりました。現在では外国法人等が日本株のおよそ3割を保有する状態が続いています。
その一方、日本では長期的に法人税率が引き下げられてきました。現在の普通法人の法人税率は23.2%です。
もちろん、
「外資や大企業を優遇するために、個人や中小企業から税金を取る政策に変えた」
と単純に断定することはできません。
しかし結果だけを見ると、私は少し違和感を覚えます。
企業には国際競争力や投資を呼び込むための環境を整える。
株式市場では株主価値を重視する。
その一方で、国内に暮らす個人や中小企業については、税金や社会保険料を含めて、お金の流れをより細かく把握し、確実に徴収する仕組みを作っていく。
結果として、日本の税制は「税率を上げる」だけではなく、「逃げ場をなくす」方向にも大きく進んできたように見えます。
私は、ここが非常に重要だと思います。
税金を正しく徴収すること自体は当然必要です。
しかし、国民の大部分を占める普通の会社員、自営業者、中小企業から、取れるだけ細かく取る仕組みを強化していけば、それが本当に日本経済を強くするのでしょうか。
手取りが減れば消費は弱くなります。
中小企業の余力が減れば、設備投資も賃上げも難しくなります。
個人が将来を不安に感じれば、お金を使わなくなります。
それでは国内経済はなかなか成長しません。
問題は「税金を取ること」そのものではありません。
集めた税金によって、国民や企業がさらに稼げる国を作れているのか。
私は、こちらの方がはるかに重要だと思います。
税金を細かく、確実に徴収する技術は、この10年で大きく進歩しました。
では同じ10年間で、
集めた税金を使って、日本人の所得や企業の成長力を高める技術は、それと同じだけ進歩したのでしょうか。
もし徴収能力だけが進歩し、国民を豊かにする能力が進歩していないのであれば、長期的には非常に危険です。
一番人数の多い一般国民と、日本経済を支える中小企業の余力を削り続ければ、最後には税金を取る相手そのものが弱ってしまうからです。
私は今、日本で本当に問われているのは、
「もっと税金を取れるか」ではなく、「取った税金で国民をもっと豊かにできるか」
ではないかと思っています。




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