日本人が世界に対して貧しくなった理由――金融緩和と円の価値

日本人が貧しくなった理由を世界基準で考える
日本人が貧しくなった理由は、円の価値と海外での購買力が相対的に低下したことにあると、私は考えています。
コロナ禍を境に、世界各国では景気と生活を支えるため、大規模な金融・財政対策が行われました。
市場へ多くのお金が供給され、その後、株式、不動産、金など、さまざまな資産価格が上昇しました。
日本も長年、大規模な金融緩和を続けてきた国の一つです。
その後、日本銀行は金融政策の正常化を進め、2026年6月には政策金利を約1%へ引き上げました。これは日本銀行の公式資料でも確認できます。
それでも、日本の一般的な預金金利は、物価上昇や一部の海外金利と比較すると、依然として低い水準にあります。
私が海外で実際に銀行口座を持ち、現地の金融商品や事業に接して感じたのは、海外の資産だけが特別に高くなったのではなく、日本円の価値が相対的に低下した面も大きいのではないかということです。
給料や貯金額が同じでも、買える物は減っていく
日本では長い間、「貯金は安全」という考え方が定着してきました。
確かに、銀行へ預けた100万円が、通帳の上で突然90万円になるわけではありません。
しかし、物価上昇率が預金金利を上回れば、同じ100万円で買える物は少なくなります。
通帳に表示される数字が変わらなくても、実際に使えるお金の価値、つまり購買力は低下する可能性があります。
誰かが違法に資産を奪っているわけではありません。
それでも、長年コツコツと貯金してきた人の購買力が、物価上昇と低金利によって少しずつ目減りしているとは言えるでしょう。
モンゴルで実際に確認した高い金利
私はモンゴルで現地法人を運営し、銀行口座や不動産を実際に保有しています。
現地の金融市場に触れて驚いたのは、日本とはお金が動く速さも、金利水準も大きく違うことです。
私のモンゴル法人では、銀行のトゥグルグ定期預金を年14.5%で実際に利用しています。
これとは別に、事業者やノンバンクへの資金提供について、預ける金額、期間、通貨、途中解約条件などを交渉した際、年16〜18%前後の条件が示されたこともありました。
私が確認した範囲では、次のような目安でした。
約300万円:年16%前後
約1,000万円:年17%前後
約2,000万円:年18%前後
ただし、これはモンゴル全体の標準金利ではありません。
また、銀行の定期預金と、ノンバンクや事業者への資金提供は、まったく同じものではありません。
相手、金額、期間、通貨、資金需要、解約条件によって提示内容は変わります。将来も同じ条件が得られる保証はありません。
高い利回りで事業が成立する理由
日本の感覚では、資金を提供した人へ年18%を支払えば、事業として成り立たないように思えます。
しかし、私がモンゴルで確認したノンバンクの中には、投資家などから高い金利で資金を集め、それをさらに高い金利の自動車ローンなどで貸し出す仕組みがありました。
モンゴル銀行の2025年第3四半期の統計では、銀行の加重平均金利は、自動車ローンが約19%、消費者ローンが約24.4%でした。モンゴル銀行の公式調査
ノンバンクや個別の消費者向け商品では、これより高い金利が設定されることがあります。
高い金利で貸し出すことができれば、その金利差から人件費、店舗運営費、貸し倒れ、回収費用などを負担できます。
つまり、年16〜18%という提示には、その先にさらに高い金利で借りる人や企業が存在するという背景があります。
ただし、高い貸出金利があるからといって、資金提供側の安全が保証されるわけではありません。
銀行以外にも運用先はあるが、性質は異なる
モンゴルをはじめとする成長国では、銀行預金以外にも、さまざまなお金の運用先があります。
例えば、
成長途中の事業への出資
店舗や会社への小口投資
不動産の購入と賃貸
企業や事業者への資金提供
利益を分け合う共同経営
などです。
現地の人たちが、本業の給料だけでなく、副業、商売、共同経営、知人の事業への出資など、複数の収入源を持っていることにも驚きました。
ただし、これらは銀行預金ではありません。
出資先の経営が悪化すれば、利益が出ないだけでなく、元本を失う可能性もあります。
利回りだけで比較せず、銀行預金、融資、社債、出資、不動産など、それぞれの性質を分けて考える必要があります。
高い利回りには相応のリスクがある
私は、高金利の商品へ無条件にお金を預けることを勧めているわけではありません。
私自身が信用できると判断した相手であっても、日本の銀行預金と同じ意味で安全だとは言えません。
主なリスクには、次のようなものがあります。
銀行や事業者の信用リスク
トゥグルグの為替変動
インフレによる実質価値の低下
途中解約の制限
海外送金や資金回収の難しさ
現地制度や税制の変更
元本保証や預金保険の有無
利回りが年18%でも、トゥグルグが円に対して同じ程度下落すれば、円換算した利益はほとんど残りません。
反対に円安が進めば、利息に加えて為替差益が生じる場合もあります。
しかし、為替がどちらへ動くかを確実に予測することはできません。
大切なのは利回りの数字だけでなく、
誰に資金を預けるのか
銀行預金なのか、融資や出資なのか
どの通貨で運用するのか
どのような仕組みで利益を生んでいるのか
途中で解約できるのか
満期時に資金を回収できるのか
まで確認することです。
海外送金で感じた日本の厳しさ
私がもう一つ疑問を感じているのが、日本から海外へ送金するときの厳しさです。
海外不動産の購入や法人への送金など、正当な目的であっても、送金目的、契約書、相手先企業、口座名義、資金の出所など、多くの確認を求められました。
銀行によっては、新規の海外送金を取り扱わないと言われたこともあります。
一方、私の経験では、海外から日本へ資金を戻すときの方がスムーズに進んだ場合もありました。
こうした違いを経験すると、「日本から海外へ資産を移すことが難しくなっている」と感じます。
ただし、政府が国民の資産流出を意図的に妨げていると断定できる証拠はありません。
銀行が確認を厳しくする主な理由は、マネーロンダリング、詐欺、テロ資金供与などを防ぐためです。これは日本だけでなく、国際的に金融機関へ求められている対応です。
問題は、必要書類や審査基準が分かりにくく、銀行によって対応が異なることです。
安全対策は必要ですが、正当な海外取引まで事実上難しくなっていないかは、今後検討する必要があると思います。
日本から海外へお金が向かう理由
。

日本では物価が上がっても、預金金利はそれほど高くありません。
一方、海外には大きなリスクを伴うものの、それに応じた利回りを提示する運用先があります。
個人や企業が円を外貨へ替え、より高い利回りを求めて海外へ資金を移すことは、自然な判断の一つです。
ただし、個人の海外投資だけが円安を引き起こしているわけではありません。
為替は、国内外の金利差、貿易、経済成長への期待、政府や中央銀行の政策、市場心理など、複数の要因で動きます。
海外へ資金が向かう動きは、その中の一つと考えるのが適切です。
私自身、日本円だけで持ち続けるのではなく、一部を海外資産や外貨へ分散するようになりました。
この経験から、円安によって海外へ資金が向かい、海外へ向かう資金が円売りにつながるという循環を、以前より身近に感じるようになりました。
円だけを信じることも、海外だけを信じることも危険
私は、日本がすぐに貧しい国になると言いたいわけではありません。
日本には、治安、医療、インフラ、技術など、今も優れた部分があります。
ただし、円の価値、物価、預金金利、賃金を世界基準で見たとき、日本人の購買力が相対的に低下していることには注意が必要です。
だからといって、すぐに海外へ送金したり、高金利の商品へ資産を移したりすればよいという話でもありません。
円だけが絶対に安全だと思い込まない。
反対に、海外なら必ず得をするとも考えない。
金利、物価、為替、税制、送金制度、事業者の信用を確認し、自分の資産に何が起きているのかを知る。
そして、利益だけでなく、損失が発生する条件も考えてから判断する。
これから自分の暮らしを守るために必要なのは、恐怖に流されることではありません。
世界で起きている変化を知り、日本の外にある現実にも目を向けたうえで、自分に合った方法を冷静に考えることだと思います。
※初回公開:2025年11月14日※最終更新:2026年9月14日※本記事は筆者の実体験と見解を記録したもので、特定の金融商品、海外送金、投資先への勧誘や推奨を目的とするものではありません
※この記事の内容は、2026年8月1日現在の情報と筆者の実体験に基づいています。
協同組合かけはし/KAKEHASHI HUMAN MONGOL LLC 後藤友亮/GOTO YUSUKE
静岡県浜松市/モンゴル・ウランバートル 公式サイト:https://www.kakehasi.biz/





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